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作品 - 20170513_836_9617p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


アフターマン

  尾田和彦





新聞紙の束に埋もれて眠る
バス停の前に立つ人々の群れ
中洲の路上には
生き埋めにされた感情が眠っている
到着したバスに乗り込む人々
バスに乗り遅れたぼく

生きていくという事は
隠すことだ
生き延びる為に
怖いほど奇麗な
秘密を抱いている人

人間とは
世界の終りを越境した集団だ
ターミナル駅の改札口
JRの地下鉄とは
世界の終りがあげた
弱々しい悲鳴の一つに過ぎない
例えば君の心を深く傷付けてしまう
人もまばらな海岸線
波打ち際を走る犬
ハイビスカスの花びらが
太陽と
恋人たちと
見つめあう
あの真っ白な砂浜の
オープンテラス席
心の傷とは
そんな砂浜の
痕跡の一つに過ぎない

新聞紙に埋もれて眠る
午前2時半
牟田町のホステスたちが
店から出てくる
金曜の夜の晩
土砂降りの雨の中
ぼくらはラーメンをすすった
見つかるわけでもないのに
見つけ出そうとしてるわけでもないのに

人々は
願わずにすんだ
夢の一つをポケットに押し込む
見てはいけないほど
来てはいけないほど
遠くの町に
もたらされた雨の
つかの間の歴史が
美しい

ぼくは歓楽街のホテルを出た
このまま旅を続けるべきか
何千万と
幾億万と
沈んでいく夜の
星屑の一粒となるべきか
520号室
扉を蹴破ると
そこには朝陽を浴びた
痩せこけた白い野良犬と
誰もいなくなった食堂を
通り抜けていく風が
オリーブの葉を
揺らしていた

文学極道

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