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作品 - 20170410_978_9544p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


冬の路地

  霜田明

人気のない路地を通り抜けながら僕は
世界につけられた沢山の言葉を
(ほとんど親愛の感情で)
一つずつ忘れていった
  バスドラムのように鼓動をうつ
  人待ちバスのアイドリング
  (だけどふしぎに音がない
   そこには行為がないからだ)

試験管でのような
下方沈着の閉塞感のなか
白息だけでわかりあうことに
期待を抱きかけていた
  (冬の文明開化は
   甚だしく)

この町の動力源は
誰かが回した8mmフィルム
   ジリジリジリと過去を刻んで
   人々の活気は送られる

僕らは素敵な登場人物だったから
勝つ喜びも
負けることの惨めさもよく知っていた
  僕らはほんの端役でしかなかったから
  たった少しの勝つことにも
  負けることにも
  関係がなかった

    (風、あるいは影)
僕はもう十分生きた
とおもっていた
    (固い足音)
     僕らは生きるよりずっと先に
     生まれてくるべきはずだった

あてもなく歩いていたわけじゃなくて
あてもなく歩いている僕ならば
世界の完成を崩すことはないと思っていた
だから
あてもなく歩いていたわけじゃなくて
世界と一緒に完成していたかった
僕は世界と仲直りしようとしていたんだ
世界と仲直りしようとしていたんだ

文学極道

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