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作品 - 20170331_775_9521p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


どこにでもあるものをなきものとして

  鷹枕可

死までへの執行猶予でしか勿い、それらのために、

     ・

わたしの乏しき血の糧が
どこにでもある様な優しさを咎めるなら
それは普遍の窓に揺蕩うあなたのなきがらをうめてゆく
怖ろしき父親の書斎の椅子です

のどが乾き
罰せらるため生み落とされた
揺籠を花の様に笑う
口無しのみどりごへ綯われた
ありとあらゆる乳香を薬包紙がひらき、
解剖台のなかで喪われてゆくのが見えますか

それは あなたがたの尊厳です
それは あなたがたの誕生日です
それは あなたがたの戸籍です
それは あなたがたの火葬室です

余命を報せる趨勢の終わりを
母親が愛した葬歌を
踊りましょう
本当は花殻のなかに隠れてしまって
見えないものですか
贋作の偶像とも
肉体像を悪魔の白薔薇とも知れぬ
恙無い
端緒より救済されてゆく
死が終わりではないのならば
それなら

わたしはわたしを遂にみることすらかなわぬ鏡の映像のように、
つかむことも覚束ない死の癒えるまでを離れなければならないのでしょうか

その前後縦横に余りにも死は明るかったものですから
わたしはわたしを熔け爛れてゆく錫の涙漿液へ開く
閂のある中世建築物総覧を諍いの壌へと孵るまで眺めていたかったのです

果が必ずしも黎明を拇指にあてがう訳ではない様に、
曖昧なタービンの縁に錆びる蒲公英の様に
あなたたちを
冠毛と翼果で飾られた絹布に拠る
リリエンタールの花が墜ちる様に
音を立ててはならない瞑目の空間を廻りつづけているのです

物象が未だ象徴でも
抽象観念の隠喩でもなかったころに
わたしが精神を病むと電気線の拍手が聴こえると言っていました
あなたが時刻を数え、あなたが残虐のみにぬかるむ、アダムの頭蓋に吻合された両性具有の絶慟にも似て
石膏塑の偶像を毀す毎に生々しいあなたたちは処女雪に粉砕乾燥花の微塵を降らしめるでしょう

どこにでもあるものをなきものとして、

     /

腐敗をした精神の樹果はなまめかしい葡萄花を孕んでしまうから自由なのでしょうか
理路が在る様で無い哲学を少年は枕木を跨ぎながら最初の橄欖果を慈善修道院へ充ててひしめかせております 
小壜に酸漬にされた橄欖畑の風景は逆様の地球儀をつるした一本の鋼線の絃である様に絞られて
注射器のアセチレンは濃緑色の自動車婦人の容貌鏡にもさして相応しくはなかったので私製の椅子へ錆びた花束を撃っているのです
それはまるでアーチェリーの標的に沸騰液より凝縮されたうつくしく青白い病院であり、また赤十字輸血車の忙しない血のレトルトなのでしょう
膵臓を霰が徹底される毎に聖母像は裸婦像を影像として対偶でありながら永続を引き裂かれて傷む鶏頭花のさざめき已まなきベランダからの峻厳な機械元素の総てを
生きたまま死にても同じこととあなたが仰られるならばその様にも呼びましょう
或は永続の終りへ執念の帆立殻のひとつである巡礼者達を厭うのは死としての偶像ではなく世界像の不明瞭な弁明と魘夢の露見としての磔像が流す錫の微針の血脈樹にも始めから何所にも麗かな美少年達などはいはしないのに
青褪めた鳥たちを撃ち落したならば自由にもなれるのでしょうからきみたちは口にしてはいけないのです瞭然と瞠った者が瞠られる姿勢のあるがままを残虐な精神像の終始を


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