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作品 - 20161230_880_9378p

  • [佳]   - 熊谷  (2016-12)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  熊谷


海のうえに
巨大な女が横たわっている
白い肌は透き通っていて
その向こう岸にある
無人島もぼんやり見えている
近くを漂う漁船は
女があくびをするたびに
ゆらゆらと揺れて
けれど乗っている人達は
それを波の揺れだと思っている
裸にも関わらず
何のいやらしさも感じないのは
この界隈には一年中
霧がまばらにかかっているから
砂浜にはたくさんの穴が空いていて
そこからは動物の
寝息が聞こえている
特別大きないびきをかいている穴を
ヤドカリは覗き込み
しばらく動けずに固まっていた
反対側の浜辺で
焚き木をしている人間がいる
この世界では
人間だけが服をまとっていて
それがとても不自然だった
煙がこちらまで流れてきて
女が不機嫌そうに目を開けた
その瞬間に雲が太陽を隠して
あっという間に
ここにいる全員の身体が冷える
そして焚き木の炎は
きっと消えてしまう
なぜなら今の
季節は冬なのだから
誰もが眠り
誰もが夢を見る
今にも雪が降りそうな空に
女はまた瞼を閉じて
あくびをし
口から白い息を吐いた

文学極道

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