清潔な剃刀の刃を
止まない雨にあてると
雨は血になり
薔薇の花びらはさらに赤く
ひろがっていく
5月は
永遠に5月のまま
ソファのうえで溶ける檸檬の
匂いがした、無音の
テーブルに置かれた新聞にはいつも
なにも書かれていない
あるいは
五線譜のような電線
そのすきまを街並みが
海へむかって移動していく
動かない電車の
窓を、いつまでも眺めていた
ぼくの手は少しだけ腫れていて
つぎの駅を降りたとき
口のなかは血の味がしていた
雨の線
その両端を
そっと折りたたむように
赤い傘をひらいた
いま、
白い服のうえに
さらに白い上着をかさねている
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選出作品
作品 - 20161116_210_9268p
- [優] 薔薇の花 - ねむのき (2016-11)
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薔薇の花
ねむのき