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作品 - 20160908_474_9090p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


かのじょの肖像

  あやめ

とむらったり とむらわれたり
獲得したとしつきで
いびつなたかみから許そうとしている
けもののような草花をふみたおした
夏のふうけいをまいそうして
吸いこんでいく
ひるすぎまでの断水
まだ遠ざかっていたい




こうなる以外にも なりようはあったのだと
ゆめの不正な咬合でおもたくなったあたま
ひとつづきでとぎれることのない感官
どこまでもどこまでもつづく
貯水槽のとなりに放置されていた自転車の
あざやかなしょうめつの緒をゆわえて
ほら、
戸棚のなかで水菓子がだめになろうとしている
桶のなかで金魚がだめになろうとしている
ふたついじょうの
欠陥がある
いきをするよおにいきているので




(あ、)

あの 競泳者のような雲たちのながれ
ねむたくなるようなゆうなみ
ウールであまれた洋服をぬいでいく
あかるさや
くらさではかることを許された
幼児のころにめぐったはてしない時間
ひかりの環からはずれて
月のプロセスをあいするということ
それは
まぎれもない下降だった




夜、になってしまえば
うつくしいたてがみのシマウマを抱擁する
そういうゆめをはじく器官となって
色彩をともなったいらだちを
突き崩していく
爪のすきまに入りこんだ
繊維状の
ゆめの天体
蝉のはねよりもあわい
白線のうえを歩いていく
ここはまだ浅瀬
どこまでもどこまでもつづく


消灯、

文学極道

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