記憶を失った詩人が
昔書いた詩を朗読してもらった時だけ
声を上げて泣いた
いつかプラットホームで
往年とかわらない端正な横顔
「君、もう僕は詩が書けないんだよ」
「君、もう僕はどっちの方角に帰ればいいかわからないんだよ」
それが
どんなに悲しい告白であったか
「君、詩を書くんだよ、」
と くり返し言った
もう どっちの方角に帰ればいいかわからない
冬のプラットホームで
*
いつかわたしが
自分の詩を読んでもらって
声を上げて泣く
沢山の詩を書いたが
一つとして満足の行くものはなかったと
それなのに
今は書けないと言うことがどうしてこれほど
悲しいのかと
わたしが詩を書いたことなど
クヌギ林を風が通り抜けたくらいのこと
それなのに
詩を書けなくなった自分を
まるで何かに詫びるようにーー
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選出作品
作品 - 20160805_012_9011p
- [佳] プラットホーム - 李 明子 (2016-08)
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プラットホーム
李 明子