そんなに早く鳴き始めては駄目だと思った
昨日までの雨で蒸せた空気に
咳き込むように鳴いていたから
たぶんきっとお前は他より先に死ぬよと思った
そうしたら夏の盛りに騒ぐ仲間の下
お前は地面に転がるんだよ
だから昼
私はぬらぬらと光る
お前のその背中を思ってやったんだ
わかるだろう
昨日の夜の話だけど
最後の蛍が運良く見えて
その光をおっかけていたんだ
そいつは長く生きたのか
生まれ遅れたのかわからなかったけれど
私は同情もそこそこに
”綺麗”なんて言葉で片付けたんだ
でもね
お前は夏の優美ではないんだ
お前は夏の幻想なんかでもない
お前は夏の形なんだよ
それが夏から外れて鳴いたって
人間なんぞからみたら姿にならない
だからそんなに早く鳴いてはいけない
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作品 - 20160623_966_8905p
- [優] 今今に - つばめ (2016-06)
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今今に
つばめ