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作品 - 20160603_175_8863p

  • [優]  朝の詩 - ねむのき  (2016-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


朝の詩

  ねむのき

世界のはしっこで 体育すわりをしながら
目をぎゅっとつむっていると
くずれおちそうな海がみえてくる
水に印刷された星座がみえる
防波堤のうえで 先生が
ばらの花のように 死んでいるのがみえる

先生の手に触ると
透きとおっている 壊れた教室があって
夜を写像する窓を おしひらいて
ぼくは街のあかりを吹き消した
ぶよぶよした境界線のむこう側から
先生の声が なつかしく散光し
夜の水槽は
すこしづつ青空にみたされてゆく

水平線は風にちぎれて
スカートが柔らかくふくらんでいる
丸い眼鏡の奥にはまだ
うつくしい眼球が浮かんでいる
(先生の眼は、いまなにを、まなざしているのだろうか)
透明な教室から まっ白な少年たちが
朝の校庭へすべりおりてくる
ぼくは先生に くちづけを
しなかった けれど くちづけるようにそっと
先生を抱きしめて 海へ棄てた
ずぶずぶとくずれてゆく海
鳥のようにくるしくなる呼吸
十字架の形をした飛行機が
青空のたかいところを飛んでいるから
まぶしくて ぼくは目をつむる
ずっと目をつむっていたいのに
ぼくの視界はにわかに
世界の果てにある体育館にむかって
ゆっくりとひらかれてゆく

文学極道

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