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作品 - 20160521_939_8844p

  • [佳]  無題 - ねむのき  (2016-05)

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無題

  ねむのき

画用紙の中できみが刺し殺された夜に
水平線を歩いて対岸へゆきたかった
出来事はいつも腐っていて、果物だけが友達だったから
ぼくは紙飛行機を海に浮かべてばかりいた
夜はひし形の街にずぶずぶと沈んで
星たちは重なりあいながら、手の鳴る方へと昇ってゆく
駅は崩れた人の抜け殻だらけだった
誰も彼もが、幻覚のスーツを着て
空想の列車に運ばれながら、血塗れの窓から世界を睨んでいる
そうやってすこしづつ殺されてゆく
やがてとりかえしのつかない速度で叫び声となってホームから飛び降りてゆく
そのたびにぼくは
画用紙の中できみが刺し殺された夜のことを思い出す
水平線を歩いて対岸へゆきたかった
傍らにはいつも死んだきみがいて
腕時計みたいに笑っている
あの日きみを刺したのはきっとぼくだから
紙飛行機を海に浮かべてばかりいる

文学極道

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