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作品 - 20160511_700_8813p

  • [優]  危篤 - あやめ  (2016-05)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


危篤

  あやめ

抜きとったら残りませんか、はらわたいがいの装置として、背泳ぎをしながらわたしは、空を、それは細密な
犬歯でかみちぎる、気がとおくなるほどのへだたりは欠陥ではないのだと、そうやって窓辺をささえる模造の花が、白から青へ、青から紫へ、かくじつに褪せていく、半透明の容器のなかで
みみたぶが雲の裾とせっしょくしたときの、かすかな破裂音、おおくを否定してきたことをおもたくかんじた、その、ひだり斜めうえを滑空する鳥の、水をはじくあかるい尾羽、それになれなかった、そこを押しひろげた
あまりにきれいな切断面は欲しいならあげます、と手わたされた風船のように、おぼつかない幼児のあしどり、針でつつくと破れますか、やはり、騒がれることなく押し流されて、用水路にはたいりょうの花びらが、朝にかぶせる白布のように


たなびいている
束ねた髪が、水をおおくふくんだ風にひっぱられて、おもたい、脳のなかをふく風は、やわらかで
錆びついた蛇口をひねる、鳥たちがいっせいに飛びたっていく、鈍いひかりを、それはたぶん、剥離、というものだったのだろうけれど、ふるいアルバムの写真のなか、人びととわたしが正面を向いて、なにかの装置のようにおさめられていた、あざやかな花畑を背景にして、まるで
果てしなくそそぎこまれている、そそぎこまれているという感覚も失うほどに、浮かぶことや沈むことばかりかんがえている、わたしの
こうなる以外になかった、空がゆらゆらと、色づいていくようすを眺めていた

文学極道

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