うす暗いキッチンの
冷蔵庫を開けて
牛乳をついだ
窓の外から
裂けてゆく蕾の
悲鳴がきこえてくる
ベランダから国道を見おろす
光が河になって、街を流れてゆく
夜はもうつめたくない
三月
訳がわからないまま
また、春がきて
溺れるように僕は
24になった
ねえ、母さん
僕たちが、祈りを捧げるべきひとは
もういなくなってしまったよ
つまりここには、最初から
誰もいなかった
いつも
唇からあふれる
青白い牛乳に、星は
まるで魚のように
ふらふらと漂っていて
7階から墜落しながら
世界はこんなにも透明で
きれいだったと
ちぎれた星座のように
さいごに叫ぶだろう
最新情報
選出作品
作品 - 20160426_163_8775p
- [佳] 誕生日の詩 - ねむのき (2016-04)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
誕生日の詩
ねむのき