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作品 - 20160316_282_8699p

  • [優]   - 熊谷  (2016-03)

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  熊谷

 終極。風が吹いたら、いろんなことが終わった。とりあえずあなたから連絡がなくなって、びっくりするぐらい晴れた青空に、太陽がやたら暑くって、だらだらと汗が出て、一緒に涙があふれて、デートの時に着ようと思ってた新品のスカートはハンガーにかかったままくしゃくしゃになってて、片付けしようにも何も整理ができなくて、あなたが連絡できない100の理由をひたすら考えた。それって、夏はどうして暑いのかって考えるのと同じくらい無駄だったけど、どうしても止められなかった。

 花柄。いつも買わないようなスカート、わたしに着てもらえないことでだんだんかわいそうになってきたから、どうでもいいふつうの日に着てお出かけをすることにした。スカートの模様には見たこともない花と草が描かれてて、その一つ一つが夏の暑さにやられてうなだれていたから、原宿の露店でチョコチップのアイスを買って食べて、食べ終わったところで今日あんまりチョコの気分じゃなかったなって、太陽もうなずく。

 青蒼。失恋した瞬間、わたしには青い色が塗られた。そしてペンキ塗りたてに触れるみたいに、わたしとごく近くですれ違った人々にも目に見えないくらいの小ささで青く染まって行く、それって何だか小さい青空みたい。幸せそうなカップルにもその小さな青空は少し移って、彼らはそれさえも気がつかないで太陽の方をまっすぐ歩いていくんだから、その影はどんどんわたしに落ちていく。

 追伸。元気が無くなったらわたしのことを思い出してよ、そうしたら、おいしいアイスクリーム屋さんに連れて行く。たくさんの青空をまとったわたしに、花柄のスカートは故郷を思い出してさんさんと咲いて、涙は風を誘って吹きすさむ。暑さで溶け始めるのはアイスだけじゃないって、男はあなただけじゃないって、夏はえいえんに続くわけじゃないって、太陽もうなずく。

文学極道

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