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作品 - 20160129_428_8590p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


近代的人間に拠るポートフォリオ

  鷹枕可

鎧戸の堕落が
一際燦然たる街燈を嘲笑っていた
既に私は、
詩人では勿く
詩人を韜晦した過去に
甘く鹹い縫留の秒針を降した

死を被覆する営為が
遅く、鈍重なバラストの滑稽劇に
喝采の不義を嗜み
脱輪した貨物車の様に
時間は美しい静物としての死を肯った

サン・ジャックの向日葵の黒い影像は
喪われた
過剰凝縮の星々を
総て
人物的な事象の半身である夜に綯い、
或は績む言葉の死、迄も
火薬の慈善修道会である旧世紀へ

蒸気霧の硝壜を置いた

      :

見よ 夜は果ても無く渦巻き
われらの最も確かな靴音を踏み躙る
われわれの為の咽喉が
あの粘液質の時鐘を建築したとき
われわれの時間と 
幾許かの肉声を受話器に奪われたことを
この夜に燻った
曇壜の花は憶えているだろうか

われわれの樹を樹立たらしめる
それは臓腑を吊るした娼婦の痰であり
程良く調味された
呼称さえもひとつの痴夢に
連続する
幽霊の投身の様に
果敢無くも愚かしいものだ

自己と他者の咽喉に
幾許かの相違があるとするならば
それは美しい泥の眼の様に
美しい母親から憎まれた
幼時の濁声を憶えては呵責し已まない

私の時間は
既に
零年の呪わしさのなかで、
柱時計の飛花の印象のなかで、
遂には誰でも無い 
あなたを許しはしないだろう

許された者は何処にもいない、
ただ
許しを必要としない新しい人々を見た
それだけのこと

腐敗した白熱電球の中を飛び
落葉樹林の
幾多の掌を蹂躙した 
あの嵐の窓を越境した者は一人もいない
私はそれでも見ようとするのだ
夥しい裂罅に覆われた
鳩卵の恢癒を
そして水膨の靴を

われわれの樹は
聯続しない残骸の様に暴風の時刻線を謳った
造語と 諸々の季節は
コールタールの添花の様に静物となり
静物は
無機物か有機物の瞳孔に
化学的錯体の構造を非対称とした

見よ 鐘は理由も無く鳴り響き
    われわれはその時を知るだろう

文学極道

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