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作品 - 20151217_728_8507p

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ときには花となって

  山人



私は梅雨空の
とある山の稜線に花となって咲いてみる
霧が、風にのって、私の鼻先について
それがおびただしく集まって、やがて
ポトリ、と土の上に落ちるのを見ていた
私はみずからの、芳香に目を綴じて
あたりに神経を研ぎ澄まし、聞いている
たなびく風が霧を押しよけていくと
うっすらと太陽が光りを注いでくる
豊満な体を、ビロードの毛でくるみ
風の隙間から羽音をひるがえし
花蜂たちがやってくる
 ひとひら舞い、するとその羽ばたきを忘れ、落下し
やがてまた思い出したように空気をつかむ
そのように、落下したりあがったり
きまぐれな空気の逢瀬を楽しむように飛ぶ
それは蝶々
 私は、そのように
花になったり、花蜂になったり、蝶々になったりしたが
またこうして
稜線の石になって黙ってそれらを眺めている

文学極道

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