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作品 - 20151020_690_8374p

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出稼ぎ人夫

  山人

飯場に着くと、俺たちは襤褸雑巾のようにへたり込んだ。ねばい汗が皮膚に不快に絡みつき、作業着は雑菌と機械油の混合された臭いを放っていた。風呂は順番待ちだし、俺たち人夫は泥のような湯船に浸かるしかない。なんとか汗を流せば飯の時間だ。寝泊りする作業小屋から少し歩くと飯炊き女が居てそこで飯を食う。塩ビで出来たどんぶりにまったく光沢のない飯粒を盛る。葱だけの味噌汁、たくわんと鯖の缶詰をおかずに食うのだ。それぞれが安い焼酎ビンをかかげて、生目で飲りながら飯をかっ込む。あとは、酔いつぶれて寝るだけだ。雑魚寝の飯場は花札をやる者、ひたすら不貞寝を決め込む者の二通りしかいない。夜中に酒が醒めるとうるさい薮蚊が徘徊し眠れない。
 隧道のなかで俺たちはひたすら一輪車を押したり、剣スコップで土をほじくったりする。十時と三時に短い一服があって、ずっきりを出して刻みタバコを吸うのだ。刻みタバコを一塊吹かして、火の塊を手の平にぽんと投げつけまた葉をねじ込む。皆が鬼畜の作業から開放される一時だった。それを二回やるともう作業のサイレンが鳴る。サイレンの後には澱んだ重い吐息と溜息が地の底を這う。
昼飯にはメンツ弁当にびっしり隙間なく飯粒がねじ込まれていて、隅っこにしょっぱいだけの昆布の佃煮と、真ん中には真っ赤な血のような梅干が置かれていた。
 俺たちは出稼ぎ人夫。かかぁの股を風に吹かせても、銭を稼ぎにやってきた道具だ。かかぁの股を掘ることもできず土をほじくっている。夜中には、板張りのからっ風の吹き通る糞山の便所で棒を擦る。腐った泪が糞に纏わりつき、そのまま死んでゆく。このまま俺たちは、かかぁの穴の寂しさを埋めることも出来ず、腹の突き出たじじぃの札束を増やすために死んでいくんだろう。

文学極道

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