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作品 - 20150828_371_8270p

  • [優]   - ペスト  (2015-08)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  ペスト

人形の燃えた跡に残ったのは白い花
人肌に溶けた窓ガラス越しに
 手を伸ばして灰を掴んだ

拘束された酸素は留置場の底で眠る
 水面とドア
 船からあがった煙
顔のない馬車を鶏は追いかけていく
牛の中では水銀の上に瞳が浮かぶ

四角い炎の中心で果実は剥がれ落ちる海洋を思い出していた
 指紋の泣き叫ぶ声は透明な鏡の上を往復する
羊から溢れ出た小さな視界の粒子
木の葉のように空を舞う冷たい砂の膜の中へ
 クラゲの触手は人差し指の形をした孤独な振動を置き去りにした

僕の心電図が北の夜空へ映し出された頃
 飛べなくなったばかりの星を君の眼はなんと呼ぶだろうか

霧の茂みに隠れ
 血の塊がその汚れた翼を火で洗っていると
  その匂いを嗅ぎつけた鳥たちが地面の中から這い出てくる
解体された木の構造は水道管の奥に詰まっている
地図のもつ甘さに蟻たちは所狭しと群がった

指の上を魚の骨格が泳ぐ
 干からびた溶解炉の心拍数は次々とピアノの鍵盤を飲み込んでいった

赤い線の上だけを渡る蒸気機関車の群れであり
羽の欠けた蝶の体を循環する鳥の胃液の推進力であり
閉ざされた貝殻の内で死を待ちわびる温度でもある
 森林に咲き乱れた唇の間からは
  細菌たちの産声が静かに零れ続けていた

遺伝子工学の上に一匹の蛾が止まる
 黒く酸化した月に産み付けられた卵が割れ
  この星には初めての雨が降った
青い暗闇の中にいて、記憶は私たちの眼差しを歌う

文学極道

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