淀んだ眠りは武器を取った
蜜蜂の運ぶ神聖な吐き気の正体を
皮手袋に包まれた冷たい心臓へ差し出すために
黒い蟻たちの行列が森の外周を覆い囲む
痺れた右腕が戸棚の奥で笑っている
宇宙が寂しがって僕を呼んだ
広い無菌空間の真ん中で
破れた人形の脇腹を溶け出した沈黙が塞いでいるというのに
肺炎を患ったドアが小刻みに震えている
母親の乳を吸う小鳥がどうしたのかと尋ねるが
奥歯のない星は手のひらの上の老人を見つめたまま話そうとしない
まばたきをした回数だけ古い文字は消えていった
死んだはずの助産師はベルトのないズボンの中で凍っていた
上昇気流の中から白い血液だけを抽出するように
送電を絶たれた換気扇がコップの底に沈んでいた
もうしばらくで朝が来るだろう
そう言って引き抜かれた釘はザリガニとコオロギの間で今も挟まっている
牛に引きずられていくオルガンも
毛虫の涙から作られた消毒液も
みんなドアのない部屋の中で一人ずつ減る悲鳴の声を聞いている
最後に残った囚人は鶏の夢の中で朝を迎えるのだった
これだけはよく覚えておくようにと言われ、聴かされた鼓動の音も
今ではもう、ノックの音とさえ聴き分けることができない
花瓶に挿され飾られた空が雨滴の首を絞め殺していった
開かれた眼を蝋燭の火で炙る無邪気な鳥
ついに吐き出された青色の瞳が
気泡の群れを掻き分けて海の中へと沈んでいく
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選出作品
作品 - 20150807_902_8238p
- [優] 鮫 - ペスト (2015-08)
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鮫
ペスト