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作品 - 20150702_078_8168p

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夕陽の沈む向こう側

  尾田和彦




賭け(人生)に負けたやつだけが知っている
俺は町の灯りを見上げた
煙草の煙が
因縁に変わる
逃れられやしない宿業
道頓堀に雨が降る
赤い傘のカップルを
黒塗りの個人タクシーが
次々と落としていく
まるで戦場の
最前線に落とされていく落下傘部隊のように
欲望の町
何万人という人間が
突き落とされただろうその場所に
お前もまたポケットに
ちっぽけな(ふくらみ)思い出さえ持たずに
「行ってくる」と言った朝に帰れないでいるのさ

世界中の時間は少しずつ狂い
やがてパリと東京の時計は子午線の上で衝突するだろう
俺たちは昔のまんま無名で
ひとりの女と人生を愛する他に何も所有はしない
愛をねじ込んだ水道栓から
欲しいだけ出す
可笑しな男と暮らしたもんだと明美は言った
俺のトランプは53枚
全部スペードにかえてある
理由は簡単だ
カードはくらないで済むし
いかさまも防げる

破産したり自殺したり
友達はみんな不幸になったが
俺は死神の待ち伏せを知っていた
夜の町には
死神がわんさといる
人間の姿をして
君の隣に
偶然を装って今日もいるのさ
馬鹿なやつさ
死神を恋人にして
ラブホで一晩中ってやつもいる
愛か情か知らねぇよ
憧れってやつかもしれない
翌日にはすっかりと精気を抜かれちゃって
三か月後に
癌を宣告された友達もいる

賭け(人生)に負けたやつだけが知っている
シャンパンの
よく回った頭で考えてみな
金もない
地位もなく
唄もない
あるのは命きり
たった一つの
命だけ
負け続けて遺されたのは
命だけ

文学極道

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