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作品 - 20150626_929_8154p

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雨の朝

  山人

久しぶりに雨が
そう日記に書きはじめてからふと外を眺める
激しく季節はずれの陽光に照らされ
疲弊した草たちは
むせぶように雨に濡れている
雨粒の音が、幾重にも重なった何処かに針のように入り込む
その奥で、カエルのつぶやきが聞こえている

季節は時をすべり
一つまみの夢を冬鳥がさらい
いくつかの諦めの氷片が砕けて冬となる
かすかに踏み跡をたどれば
そこにまた春があった
ずっと止まることなどなかった、あらゆる事柄は
終わることのない物語のように
幾冊ものノートに記帳されている

外の作業所の向こうは霧に包まれている
大気の中の微細な水粒が
すべての物物に湿気を与えている
あらかじめ知っていたかのように
大杉はそれを受け止めている

葉の裏で雨をやり過ごす蜘蛛が居るのだろう
少しばかりの湿気をとりこみ
頷くように外を眺める
生き物たちは、ただ黙って
雨とともにたたずんで居る

物語はまだおわらない
人は物語をつくるため生まれ
ずっと物語をつくり続ける

雨の日曜日はどことなく
生きる香りが漂い
乾いた何かを湿らせてくれる

文学極道

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