窓を閉め切って
小鳥は飛び立てない
部屋を出て世界へ 止まり木のない林を見てみたい 武力がわたしを束縛する 抗生物質の魔法の弾丸 何発胸に受けても治まらない咳が 軋む窓を勢いよく閉じてしまう あの金属音が鋭い痛みとなって わたしを冷たくしていくの
孤島は燃えている
浜が崩されて
堆積した鉱物は陽射しを返す
遠くを臨むなら
目を凝らさなければ太陽にも見えてしまう
何千トンの水と 何万匹の海洋動物を沸騰させて
今まさに海に落ちてきた太陽は
頭痛がするほどの光と水蒸気の爆音を
窓に響かすのだ
羽
羽が 拡げられ
翼の内側の皮膜も
よく見えるようにばたつく
小鳥の身体は温かく
瞳を落ちていく羽にもまだ残っている質量が
加速していく
聞こえるのだ この煩わしい陽の中でさえ
雪解けしていない一室に舞う羽毛が床に落ち
カツン、
ようやく始まった
熱で
窓は軟らかくなり
溶けていく
ガラスの気体は青く
空へと続いている 潮風を運ぶひとつの道ができる
きっともう二度と戻らないことを祈りながら
私は小鳥を見送る
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選出作品
作品 - 20150618_712_8135p
- [優] De'tente - はかいし (2015-06)
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De'tente
はかいし