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作品 - 20150603_456_8107p

  • [優]  裂け目 - 尾田和彦  (2015-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


裂け目

  尾田和彦


怒りのあまり
首の上に乗っかってる
頭が
今にも吹き飛びそうだった

苦痛というものは
人間を
深く地中に封じ込めておくものだ

うつぶせになったヘンドリックは
朝から熱し始めた太陽の光に晒され
砂を掴み
ヒリヒリと肩と背を焼かれ
海水の塩水に浸された顔は真っ赤になっていた

海辺のホテルに
男から電話がかかってきた
ヘンドリックは我々の捕虜になった
今から
九日間のうちに身代金を用意できなければ容赦はしない
男は低い声で言った
ヘンドリックはお前の分身だ
そいつを見捨てておくことは
どういうことか
お前が一番知っているだろう

あの感覚がまた戻ってきた
衰弱からくる恐怖
体の中から気力が失われ
生きることへの希望と信念が
やがて苦しみに変わる
ココ椰子の葉陰
遠くの海の匂い
生暖かい啓示

地面にカービン銃を下した兵士がぼくを見つめていた
鉄線の向こう側に
一匹の図体のでかいクマを運んだ
名前はヘンドリックだ
兵士は澄んだまなざしでぼくを見つめた

今は浜でグッタリしていることだろう
でっち上げられた現実が
また違う方向に向かい始めている
太陽は無関心さの象徴として空に張りつき
ぼくはカービン銃の兵士と
浜辺でリンチされている図体のでかいクマの話をしている

文学極道

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