手をコピーする。左手をコピーして、右手を
コピーする。腕をコピーする。左腕をコピーし
て、右腕をコピーする。顔をコピーする。光を
見ないように、目をつむってコピーする。肩と
胸をコピーする。服を着たまま、コピー機の上
に胸をのせてスイッチを入れる。お腹をコピー
する。コピー機の上にのっかってスイッチを入
れる。小便する犬のように、脚を上げてコピー
する。左脚をコピーして、右脚をコピーする。
足をコピーする。コピー機の前で逆立ちして、
足の甲をコピーする。コピー機の上に片足をの
せて、もう片足で蓋をしてスイッチを入れる。
そしてそれらをセロテープで貼りつける。ペラ
ペラとした白黒のぼく。頭のところをもって垂
らしてみる。目をつむったぼくの顔。手をはな
すと、ヘロヘロヘローとへたり込む。もう一度
手にもって垂らしてみる。でも、やっぱりペラ
ペラとした白黒のぼく。窓を開けて、ぼくは、
ぼくのコピーを風に飛ばしてやった。
目を開けると、ぼくは風にのって飛んでた。
とっても軽くって、ヒラヒラヒラーと飛んでっ
た。高層ビルの透き間をぬけて、ぼくは飛んで
った。どんどん遠くに飛んでゆく。風にのって
どんどん遠くに飛んでゆく。
ああ、ぼくはどこまで飛んでゆくんだろう。
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選出作品
作品 - 20150501_783_8049p
- [優] コピー。 - 田中宏輔 (2015-05)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
コピー。
田中宏輔