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作品 - 20150404_192_7996p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ひかりちゃんの卵かけご飯

  ねむのき


学校に強盗がやって来たことがあった
男と女二人だった

"靴泥棒"が来た!
とひとりが叫ぶと
みんなは慌てて教室中を逃げ回り
机や壁の影に隠れた
廊下から悲鳴が聞こえてくる
誰かが襲われたみたいだ
女子達がパニックを起して叫ぶ
喚き声と怒号が沸騰する
次々に窓から外へと飛び降りるクラスメート達を
呆然と眺めていたら
とうとう強盗の女と鉢合わせてしまった
手にしていたカッターナイフで
僕は女を刺し殺した
薄い刃が頸動脈を突き破って
鮮血が勢いよく噴き出す
〆られた魚みたいに
女は身体をびちびち痙攣させて
目と口をいっぱいに開いていた
狂気に血走った女の眼が
最期まで僕を睨み続けていた

女の死体を職員室に運んで
机の上に携帯の番号を書いたメモを残し
僕はひとりで家に帰った

それからというもの
女の人と目が合うと
たびたび僕は気を失う

ある日
ひかりちゃんという女の子が
道の真ん中で倒れていた僕を介抱してくれた
ひかりちゃんは自分の部屋に僕を連れて行った

男の方の強盗が
いつか僕を殺しに来る予感がして
不安で仕方なかった
そう彼女に打ち明けると
ひかりちゃんは
ウチのマンションはオートロックだから大丈夫だよ、と言う
すると宅急便が来る
僕はテーブルの下に隠れる

小さなダンボールの箱を抱えて
リビングに戻ってきたひかりちゃんは
ごはんを炊き始めた
箱の中身は
新鮮な卵だった

そして
僕らは卵かけごはんを食べた

卵の黄身だけを熱々のごはんに乗せ
その上に刻んだ小葱をまぶして
出汁醤油をほんの少し垂らす
それは
上品で濃厚な味わいの
卵かけごはんだった

文学極道

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