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作品 - 20150119_704_7859p

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でくのぼーの祈り

  お化け

でくのぼーは、自分の悩み事を誰かに打ち明けない。でくのぼーの頭の後ろ、ちょうど、彼のメタ観察者がいる場所で、憂鬱が集まって、雲ゆきは黒っぽくて怪しくなっているところだった。目の裏でトラウマがピカッと光ったのを見た後、彼は、猿がヒステリックな激しい鳴き声を発しているような幻聴を聞いた。雷は、彼の頭から右手へ、彼の頭から左手へ、同時に落ちて、信じる心のコンクリート部分には、ひび割れた痛みが残った。それでも彼は、トンネルをつくるために死んでしまった人みたいに、そのときも、祈っていた。無口な彼の想いの内容は誰もわからなかったけれど、たくさんの涙を染み込ませた山のように重かった。彼は両手を組み合わせて、その間にあるはずの、丘の上の雷に撃たれた一本の木を見上げるかのように、見てしまってはいけないものかのように、祈り、震えている。ボソボソ「うう・・しています…うう・・しています」という声、彼が知っている神の言葉はそれだけだった。「ねぇ神さま…」新品である神はどこにもないのに、リサイクル屋には無数の神がいる「でくのぼー、でくのぼー」祈りたい。そして、でくのぼーは、幻聴で聴いた彼の猿の腕の毛の根元で身悶えているものも一緒に振り切ろうとするかのようにして、頭を左右に振った。今日も、祈る彼に神様が教えてくれるのは「■しています」というところ以外、全部黒塗りの、報告書だけだった。それでも彼はそれだけを信じている。雨の日も風の日も、うう「・・しています」それだけを信じて、トラウマに撃たれて心が引き裂れそうな日には、神様がくれた黒い四角に閉じこもって、祈っている。夜の中ではなく、昼がいつなるかはわからない、窓のない真っ暗な、神様がくれた、普遍的な影の牢屋、でくのぼーは、寝転がって、両手を組み合わせてお腹の上に置いて、星や月のことを思い出そうとしていた。暗すぎて、彼が見ようとしているものや、彼が生きているのか、もう死んでいるのか、彼が存在しているのか、存在していないのか、例えばもし彼の顔が神様みたいであったとしても、何も見えない。時間感覚がないその祈りの中で、彼の右手にとって左手はもう死んだ動物となり、左手にとっては右手が死んでいる。手探り、手づかみ、祈らざるを得ないそれぞれの手が、生きるために相手を殺して、食べようとしている。やがて、自分自身に食い殺される。君は、何も祈っていなかった。君は、何もしなかった。君は、誰にも見られていなかった。君は、生きていなかった。そもそも全部、何もかも、最初から存在していなかったものだったんだ「でくのぼー」と彼の神様は教えてくれた。でくのぼーは、瞼を閉じていた。光の残像が見えた。それは、かつて自分は生きいて、そこからやってきた証なのだと思った。「・・しています・・しています」でくのぼーは、また、彼の神の言葉を呻きながら、震え出した。身体中に雷が駆け巡り、猿の狂った叫び声が聞こえる。神様がくれた黒い四角に亀裂が走り、その隙間から光が差し込んでくる。静かになると部屋のひび割れは見えなくなり、また真っ暗になった、と思ったら、突然「猿が逃げ出したぞー」と大きな声がした。でくのぼーは、隣の部屋の■から猿が逃げ出したと思った。暗闇の中に、縦になった一本の光の筋が現れた。そのラインはだんだん太くなっていき光の長方形、扉が開けられて、猿が入ってきた。猿は、でくのぼーの組み合わせた手を解いて、彼の手を掴んで、引っ張った。そうすると、あっという間に黒い四角はバラバラになった。明るくなって、でくのぼーと猿は、ずっと手を離しちゃいけないって、丘の上を目指してそこへ逃げるように、走った。たどり着いた場所には、雷に撃たれた木があり、息を切らした二人の、涙は止まらない。その周りを取り囲んで、砕けてしまった心の破片が散らばって生き返ったときみたいに、たくさん、タンポポが咲いていた。

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