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作品 - 20141101_522_7728p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


つり革と病院

  織田和彦



ペンギンみたいに
体を凍てつかせながら
通勤電車に乗っている
つり革の輪っか
まるで手錠みたいだ
一度そこに首が通らないか
試してみたことがある
猫じゃあるまいし
通るわけもなく
誰が触ったかしれないあの輪っか
汚ねえったら
ありゃしない
あんなもん
公共の場所にぶら下げて置くんじゃねぇ

仕事だの労働だのが
鬱陶しい朝
会社じゃ真面目で通っている部長さんが
女の子のスカートの中に手を入れた
満員の電車じゃ
間の悪い場合もあるし
部の悪い場合だってある
女の子のスカート丈だって
太腿の半端なく上の方だ

人生とは恐ろしいもので
行き着く場所は必ず墓場
生まれた場所も必ず母さんの腹の中
大概どちらも病院を経由する

「人はどこから来てどこへ行くのか」

そいつはとっくに答えの出た愚問で
人は病院から来て病院へ行くのだ
このあまりに実存的すぎる答えに
眉をひそめた貴方
社会主義革命を成し遂げたキューバでは
医療費はとっくに無料なのだ

ぼくらが子どもの頃から
馴染んできた日本の文化は
限りなく同調圧力の高い社会で
他人と違うことを
「落ちこぼれ」だとか
「浮きこぼれ」だとか言っていた

仲間に対する責任を全うすること
それが生活の100パーセントになったら
そいつはもう
立派な全体主義社会だ
ムッソリーニも
ヒットラーもいないファシズム
独裁者はぼくらの頭の中に存在する

幻想の国
ニッポンだ

文学極道

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