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作品 - 20141018_365_7707p

  • [佳]   - Kriya  (2014-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  Kriya





憧れを追い駆ける時の虚しさ
その中でしか見つけられない理由(わけ)を求めていること
いつからか
僕の片手には孔が開いていた

その寒さの中で屈まっている君よ
なんて空疎で大きな足跡だろう
君はあの大きな木の幹に凭(もた)れ
どう足掻こうとも竦んでしまう脚を優しく叱るのだ

それは微かな震えだった
孔の中から聴こえる陰たちの叫喚
もうすでにここから果てしなく遠くへと離れているのに
その音はいつまでも 鳴り止む気配がない

しかし戸惑い足を止めてはいけない
小鳥たちの囀りに耳を傾け
その音を陰たちの叫喚に分解させれば
君は確かな幻を感じるだろう



漆黒な孔にはいつの日かの俤(おもかげ)が揺れている
君はそれを静かに見つめているけれど
ほんとうは恐くて目を逸らせられないんだ
君だけではないとは言えない君だけの俤

今は孔の無い方の片手を見つめてごらんとは言わない
もし見つめたとしても陰たちの囁きに怯えるだけだから
心の煩いが溶けて無くなるまで
片手に開いた小さな孔の様子を味わっておくのだ

味わっていると思想を俤に見抜かれ
動悸が若干激しくなった君は
凭れていた大きな木の幹を触り
混沌としている胸の内を撫で下ろした

大きな木の根に君は坐ると小声で呟いた
いつもみたいに生きています
君はそっと片手の小さな孔を撫でると
心の奥から大きな溜息を吐き救われたような表情を湛えて眠った



目が覚めると空に夕焼けが滲んでいた
君は服についている蟻を払い除けて立ち上がり
孔の開いた日から着々と前に進んでいる自分を確かに感じながら
大きな木から離れ草原を歩き家へ帰る

家に着いてからも片手の小さな孔の事を考える
まるで窓のようだと思った
こちらからは漆黒の孔として見えるが
その奥からは陰たちが君を見ているのだ

君は布団に身体を横たえた
その時に胸のあたりで何かが引き千切れる音がした
君は驚き 胸に手をあてる
すると片手の孔から何かの破片が出てきた

破片が出ると孔は塞がれていた
とても硬い石のような破片だった
君はそれを手の平に乗せると
迷いもなく口の中に入れ飲み込んだ

文学極道

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