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作品 - 20140602_122_7474p

  • [佳]  脱皮 - 織田和彦  (2014-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


脱皮

  織田和彦




HONDAのオデッセイの後部座席で
ブタは酷く退屈していた
短い足を組み
ボテ腹の上で
指を組む

彼は失望していたのだ
ガイドブックに載っていた○○○はすでに廃墟と化し
○○自殺した庭鳥の群れが
LANケーブルの中に半分以上剥き出しになったまま抱卵し
突っ込まれている

おまけにそこは
帰化申請した○鮮○人達の巣窟になっていたのだ
これではこの界隈で顔のきくブタとて
○○○○する術も気にもなれないのだ

ところでブタは藤代物産の山下と馬淵に会う約束をしていたのだが
山下の○○が○○したため
馬淵と○○になってしまったのだ
その上やっかいなことに
○○ときている
この調子ではいくらなんでもブタも(´・_・`)なのだが

文明の創世以来
人々はブタのことを
その物珍しさから修正主義だとか性的倒錯者だとか
諸技芸のあいだを架橋する
独創的な方法で呼んできたが
ブタにはある種の
魔力的な仮面に似せられた悪魔が入り込んでいたのだ

それが21世紀には
モラトリアムや引きこもりやアスペルガーなどと呼ばれたが
それは事実ではない
ブタは国道1号線沿いのガストに車を停めさせた
弾けた調子でブタはオデッセイから降りると
非の打ち所のない仕草でタバコに火を点け
すぐさま揉み消した

ちぇっ!

舌打ちしたブタは
運転席の庭鳥の鶏冠を引っ掴み
こう言った

「○○!」

ブタにとって○○は○○意味し
それはブタのような野卑な○○にとってさえ
必要最低限な

○○○であるのだ

人間の惨さ
苦しみ
死や孤独の内に存在する
哲学的な情熱の恍惚と興奮とでも呼べばよいだろうか?

ブタの体を人間のフォークで突き抜けば
それはただの肉だ
肉が歴史や哲学のように
インターネット回線の中を通り抜けられる筈もない
希望を敗北させた資本主義の擬態と民主主義の脱皮
歴史とは事故なのか事件なのか
あるいは何らかの申告漏れなのか・・・
ブタはオデッセイの助手席でバックミラー越しに脱皮していた
生春巻きの中に
右足を突っ込みながら

文学極道

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