凍る舌苔が擦れあう
蟻の蘇生のような精密さで
「植物園は愚かである」
そう言って祖父は息を引き取った
(半熟の花粉を舐め取ったのは誰だったのだろうか?)
叔母の潰れた踵によると
「閑日」には挿絵がつくらしく
剥離の庭には
破棄したはずの群青だけが居残っていた
森の縫い目をほどきながら
まるで本当のことのように
のぼりつめて
いく
泥にまみれた瞼は捨てていこう
(おりこうな由来さえあればいい)
蒸れた檻の傘をかざして
(今はその気配さえあれば いい)
腐葉土を齧り尽くして
透明な底を知る
こじつけた頁は甘かったのに
(それでも)
不実の鞄を抱えたまま
練った鏡の島で沈んでいく肌が
縫い付けられた問いを保って
仏花にちなんだ君の名だけが這う
蜂の根の数珠が
仄かを羽織っていく
遠巻きに透ける喉が
とるにも足らぬあの日に凍って
まるで嘘のように
似通っていく
おりて
いく
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選出作品
作品 - 20140322_217_7364p
- [優] 冬髪 - 葉月ナジ (2014-03)
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冬髪
葉月ナジ