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作品 - 20140322_208_7362p

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anaesthesia

  コーリャ

その日、境内に行くと、村の子供たちが群がってなにかを覗きこんでいた。駆けて近づくと、ひとりが振り向き、見てみろよ、と言って、身を逸らしてくれて、大きな鼎が見えた。翡翠色のドロリとした液体が張ってあり、底にはなにかの樹の大きな枝が折って重ねてある。小さなあぶくがすこしづつのぼっている。これなに?と僕が訊ねると、しぃっ、とたしなめられる。あっ、と誰かが言って、ほら、咲くよ。と誰かが言った。枝に実がゆっくりと結んで、花が咲いた。うわあ、と誰かが言って、あぶくがいっせいに吹いてでてきて、ああ、と誰かが言って、ああ、と誰かも言った。花は開きながらそのまま散って、ゆっくりとあがりながら、花弁をひとつづつ、手放して、水面にあがるころには、光になったから、僕はゆっくりと手をのべて、水をすくった。

その日、境内に行くと、村の子供たちが群がってなにかを覗きこんでいた。駆けて近づくと、ひとりが振り向き、見てみろよ、と言って、身を逸らしてくれて、大きな鼎が見えた。翡翠色のドロリとした液体が張ってあり、底には子供のころの僕が両掌をもがれて座っている。口許から小さなあぶくがすこしづつのぼっている。これなに?と誰かが訊ねると、しぃっ、とたしなめられる。あっ、と誰かが言って、ほら、咲くよ。と誰かが言った。手首に実がゆっくりと結んで、指が咲いた。うわあ、と誰かが言って、鼎のなかの僕も、うわあ、と言ってしまって、あぶくがいっせいに吹いてでてきて、ああ、と誰かが言って、ああ、と僕も言った。掌は開きながらそのまま散って、ゆっくりとあがりながら、指をひとつづつ、手放して、水面にあがるころには、光になって、僕はゆっくりと手をのべて、水をすくった。

文学極道

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