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作品 - 20140321_198_7361p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


春と食欲

  織田和彦



春の中で眠っているものは
悲しい想いなのです
どうにかこうにか
空に登ってゆく自転車
ギコギコと
悲しみばかりが満ちてゆく頃
人間は静かに死ねる

氷砂糖のような個体の優しさや騒々しさ
その弾き出された言葉は
弾丸のように隣人を撃ち
社会に字板のペンキでルサンチマンと落書きされるのです

人間の根っこを引っ張り
やがて膨らみもつれたものが頭部と呼ばれるものになり
ビルとビルの隙間で
ネクタイを締め
電卓の中の数字を覗き込んでいる人種が
サラリーマンと呼ばれた時代
春は朽ちてゆくだけ
自らも不幸を製造する工場となるのです

妬み深く
犬の遠吠えのように白々と開けていくのが都会の夜
ゴミを漁っているカラスは
深く繋がれた業のように
希望とも絶望ともつかぬ嘴を持っている
人間が捨てたものによって繋がっている命を目の前で見る悍ましさ
あの黒い鳥は
羽の先の一枚一枚までが人間のゴミでできているのさ

だからあんなに艶っぽく黒い色をしているのかい?
いや違うね
ゴミが甘いだの旨いだのと誂う前に
食べることを止められない成れの果てが
ぼくらだってことさ

文学極道

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