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作品 - 20131224_598_7206p

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ある年表の一節より

  水野 英一

雪だるま。
赤や青のバケツ。
なかにはニット帽をかぶったのもいたり。
けど、ベッドに入るまえにはなかったはず。
チェロの枯葉が庭にいっぱい。
それがいつもの眺め。
パパの、ウィスキー色の眺めとおなじ。
ママはキッチンの窓からの眺めに愛されていた。
鹿の角みたいな木しかみえない窓。
雪だるまの目にはコカ・コーラの空き瓶。
厚いガラスのなかには、煙草の吸殻。
鱒の肌に似てる空には
まだ、朝日はみえない。
寒い日には、映写機を廻す。
自慢気に、新車のムスタングの前でポーズするパパが映る。
僕に向かって声のない声。
でも、これは過去の声、過去のまなざし。
歴史家なら、過去も現在もおなじだというかもしれない。
ロッキングチェアを、チェロの木のそばで焼いたのも過去、いまもパパは同じ目の色をしてるのも。
雪だるま。
朝日に照らされるまえに、なくなって。
枯葉が濡れて見えた。

文学極道

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