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作品 - 20131010_499_7068p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Anthropomorphic landscapes

  はなび


Anthropomorphic landscapes I

扉を開けると un bel di,vedremo が きこえた
奥の 部屋へと続く 扉のまた向こうからきこえる

この建物には 扉がたくさんあり どの扉も ひら
かれるのを 拒むようでいて また 待ち望んでい
るようでもある

建物の内部ではいつも 何かしらの音楽が移動して
いる 匂いも 空気の震動によって 常にうごいて
いる

眼球の如きテーブルが ぎょろ ぎょろ 辺りをみ
まわしている 寝起きの巨人の 髭の様なカーテン
シーツ 脱ぎ 散らかした ローブの 襞の 類い

浴室 台所 下水 へと続く ゆるやかな曲線 電
気コードの からみあう 束の 赤 黒 白 黄色
コバルト

もうすぐ 何かがはじまろうとしている  前にも
聞いた いつも 誰かが口にする まじないのよう
な ことば 良いことなのか 悪いことなのか 誰
もいちばん深いところには 届かない まま 何か

何か 何かが起こる ことだけ 明確にして 自然
の猛威にさらわれた 人間の数を越えてゆく

 我々

に内包された力は 姿を変えて ある 晴れた日に
あらわれる 空を見上げれば 雲が 恐ろしい顔を
していた


Anthropomorphic landscapes II

真空チタンのカップにビールを注いでくれる友人
うすくスライスしたカラスミをあぶりながら
ニューヨークに住む音楽家がつくった歌をハミングしている

少し音程がはずれても それは それで 魅力的
白いシャツからのぞく 逞しい民族のモチーフ
細い腕が アンバランスでも
それは それで よく似合ってる

海を眺めながら スタートレックに登場したゲームを
5回して 日が暮れるまま バルコニーでさらされた

水平線と 空と 雲とが フルートグラスにうつされた
ゼリーみたいに透き通っていく

真っ暗な宇宙空間に 吸い込まれて おなかが空いた
空っぽになって 
心地良く使い古された 木べらで

じゃがいもを うらごす
お皿に残った 混沌のソースを
掬って きれいに さらう


Anthropomorphic landscapes III

おばけばなしの好きな おじさんが やってきて

おばけのことを決して 馬鹿にしてはいけないと言った

おばけばなしが怖いのは おばけが こわいのではない

奥底に眠る 人間の 垣間見えるのが 恐ろしいのだと

文学極道

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