夏の歌がすれ違いざまに果実になる
もぎ取る手はやつれた楓、意味を途絶させることなくキスは続きその痕も焦げて致命傷へと、仮面を被った電球の光さえ余計だと思ったうずくまる吐息、その中に貯蔵される沈黙の双丘の絞らるれば勿論赤く、かつヘモグロビンの用意はないのだろうきっと、
白き窒息柔性、
ゆえに、無垢なる いろどりと知る
放課後、
木机の下で交わされる秘めやかな囁きが夕暮れのカーテンに巻き抱かれた白い足をすすぐ
生き延びた哀蚊が空に呪文を描くように幾何学としなやかな筋肉が掛け合わされた
逃走寸前のふくらはぎが漲るそれは何か分からないものの迸りを受けて
秘密だらけだった紐解かれるはずの指の絡まりが世界の全てだった頃
自分の歪みに合わせた姿見にあなたを探していました
褥の深海が
静かなのにとてもうるさい
優しいのにとても痛い
だから眠るのだと思います
耳がいたたまれないから
電気を消して
風景を捕まえる
例えば残された
手紙としての歯型が
柔らかく波打つ白い肌を透して
やがて沈殿するでしょう
夜着をはだけたままの乳房で
わたしではないものが
わたしとおなじになって
わたしの鼓動を鳴らすみたいで、こわい
わたしが流出していくのがわかるようで
うねる、うず、
その答えが、影になり
理由のない罪悪をわたしに背負わせる
なにか、が、
紙にくるまれて捨てられる
伸ばした足は痙攣して
そうして消える消えて、ゆく
揺する戯のそばに転がる指の白さ
宙に描く螺旋の文字は『の』
の、の、
と
所有を露わにする皮膚がひらり、ほろり
脆弱性を擦り合わせた夜
鈴虫なく
空間に型どられた
細動に崩れていく積み木の塔が
目に鮮やいて
やはり無垢する指を染めた
おちる、手のひらに、似た葉の
その葉脈は
まるであなたへの手紙のようでした
『 前略
こんど生まれてきたら、頭足動物になりたい
あなたが誰かと囲んでいる晩餐のテーブルに
どさりと重い音をたてて飛び降りたい
粘液質な皮膚のままで
砂に塗れた饒舌と引き換えに
かしこ 』
ふと開けば、胸乳
帰れない稜線の果て
遠き少女を、
想う
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選出作品
作品 - 20130926_182_7043p
- [優] 喪失少女。 - にねこ (2013-09)
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喪失少女。
にねこ