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作品 - 20130518_817_6878p

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何しているの?

  お化け

1番好きな人がいるの。その人は僕を1番好きな人とは思っていない。そう思うと裏切り者になりたくなった。僕は、7番目ぐらいに好きな人をのことを1番目に好きなり、夜の溶液の中に身体を浸した。僕の表面は少し溶け出していた。目を覚ますと、その人は7番目ぐらいにに好きな人に戻っていた。裏切り者なりたかった。1番に好きな人を0番に好きな人にして彼女を裏切ろうとした。精神的に疲れた。外に出て僕は歩いていた。ブツブツ独り言を言っていた登校途中の小学1年生ぐらいの男の子が「何しているの?」と聞いてきた。「歩いてるの」と僕は言った。前方に4歳ぐらいの女の子とその母親であろう人が歩いていた。僕は追い越した。女の子は走って僕を追い越して行き、振り返り、僕の顔を見て母親のところへ戻って行った。僕はいったい誰なんだ。僕の意識は時間を逆流しながら細部の景色を洗い流し「何しているの」という、さっきの子供の問いに戻っていた。僕はもっと正直で正しく明確に答えたかった。僕は何をしているのか。「問」が明確な空欄となるように取り囲みたかった。自分の問いであるべき部分が問いになるように的確に、自分を壊したかった。自分の心の中心的位置で正確に穴を開けて、まずは0番目に好きな人をパズルの試行錯誤として、そこにはめ込んでみたかった。その答えが正しいのか、間違っているのか、検証したかった。僕の色々なことが伝わらない、という考えがハイジャックしてくる。言葉で誘い彼女をその位置まで誘導していく自信が僕にはなかったし、実際その才能は僕にはないのだろう。しかし、どこかに進まなければならないのだとしたら、確実なところではなく、曖昧なところにむしろ心理的安心を見いだす必要がある。僕にはそうやって未来に進もうとするのが、彼女が家のドアを開けたときに笑顔でさっと足を差し込むときのように、合理的な戦略に思えた。僕は霧状になった曖昧さの位置を確認しようとした。硬い過去に取り囲まれた柔らかい現在があり、その現在に取り囲まれた未来がその曖昧さだった。「僕の未来」は時間的な意味では、常に僕の心の中心的位置に存在する「問」であるように思えた。その先にある「死」は、僕が意図的に自分を壊し、脱皮を繰り返すための定数「1」のひとつであるように思えた。僕が首を吊れば1回僕は死ねるという意味での定数1。僕はやがて定数1になる関数であるが、「やがて」に至るまでに、例えば、0,1回死ぬのを人生の中で20回繰り返して2回死んだことになるような関数であらなければならない、と思った。過去の足し算の結果を保存するような関数。僕はこれまで何度も「死にたい」と思った。僕は何度も自分を壊し、心に穴を開け、未来の曖昧さの中で「問」としての自分の心を再定義しなければならなかった。僕はもう少し歩きたい。少しは進んだような気がする。「問」としての未来の可能性は、木のように枝分かれし、曖昧な葉を茂らせている。とりとめもなく「問」が様々な次元に発散するから、新たに定義された僕の心の中心を見つけるのは難しいことだった。見つけたとしても、未来へと進む0,1的自殺の運動の中で重心に注意を向けそれを維持するのは難しいことだった。心はバランスを崩し何度も転び、定数1に収束しそうになった。僕は今日疲れていた。公園のベンチに座った。そこで僕は彼女をハメるための落とし穴を作ろうと考えた。「問」の木の枝として伸びた可能性からちょうどいい長さの枝を折って、僕がまず0番目に好きな人を落とすための空欄に橋をかけた。たくさん枝を折って材料を集め、穴に格子状の構造つくった。そこに「曖昧な葉」としての未来の可能性の落ち葉をかけて、穴がわからないようにカモフラージュした。落ち葉の下には未来はないように見えるけど、本当は未来が隠れている。なにも怖くない。あなたが落ちたら僕も同じ未来に飛び込む。これでいいと思った。僕はどこであなたを待っていようか? 僕はこの舞台上で木になって待とうと思った。曖昧な微笑もしくは演技の自信のないときはモナリザのお面を貼り付けて、落とし穴の前で木の演技をする。曖昧な葉を持ち、両手をあげて、これが木の枝。僕はこの舞台の木という登場人物。今度の学芸会で「木になれ」と命じられた子供だけにはこっそり教えてあげる。何しているの? 僕は木になっているの。植物人間。だから本当は喋っちゃいけないんだ。しかも擬態を完璧に近づけるためには凡庸な木になるための訓練をたくさんしなくちゃいけないんだ。

文学極道

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