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作品 - 20130401_884_6789p

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地下アイドル

  お化け

確かに普通のレベルよりは可愛いと認めるけれど、すごく可愛いというわけでもなく、また、すごく綺麗というわけではない、ということを多くの男性が賛同するような見た目の女性がいた。彼女自身が自分自身のことをどう思ってること言えば「自分はすごく綺麗なわけじゃないけど、自分はすごく可愛い」というものだった。白いモヤがかかったプリントクラブ的な自己認識。彼女は自分のことを「媚を売ることは出来ない子で不器用だから本物のアイドルなれない地下アイドル」のような存在と位置づけていた。公用地ではなく私有地に。実際にアイドルとしての活動してるわけではない。それから、自分は天然、自分は変わっている、などという性格も、スパイスとして入ってるんですよ。なるほど。そうですか。それは美味しそうですね。違いますよ、私はスパイスをかけるとかそういう食べ物じゃないですよ、と現状把握する彼女、天然物の変わった果実として自分を見るその彼女が「食べられたい」と自分が思っている男性の見た目については、自分に自身にたいするのと同じように、プリントクラブ的認識で、1癖も2癖も3癖もある男的なようなものを求めているわけではない、ありきたりなビジュアル型が好み、顔立ちがよく、オシャレで、オシャレじゃないなら自分がオシャレにしてあげる、背はそこそこ高くて、でも高すぎてもだめで、茶色い髪の男が好きだった。茶色い方がなんだかかっこよく見える、だけど最近は黒くて長めの少しぼさぼさした感じのもいい、等、友達と3日前に会話した彼女は、この日もいつものように、猫の毛づくろい精神的の頻度で、心の手鏡を覗き込んで「自分はすごく可愛い」と見える錯覚の角度を再認識、世界を見るためにじっとしてられない精神的眼球は、メールをうちながら歩くときみたいに出現してくる「自分はすごく可愛い」自己世界内とその外側の世界の間を往復、肉体的な眼球は、いつもと同じような自分の生活環の周りでうろちょろしていた。しかし、この日は普段の日々と少し違っていた。いつものように彼女が手鏡覗き込んだ歩いていた間に、確率的にいつか事故ルと警告されていたような住所不定の何処かにつまずいて、彼女の日常を彼女の歩幅で分割する足音のリズムのタイミングが狂っていた。あるいは、彼女の「外側から? 内側から?」原因不明の偶然で彼女の日常を弾くためのピアノから音が出なくなったので、彼女の行動スペースが一時的に狭まり、彼女が選択し進んでいくことができるありきたりなメロディーの行動路が閉鎖されてしまった。そのとき、偶然、彼も同じ場所にいた。

僕は彼女の隣に座っていた。僕たちは偶然出来てやがて消滅していく排他的経済水域の中にいた。そこには北朝鮮の密航船はやってこなかった。工作船もやってこなかった。そこは、運命を統治するの国の官僚が犯した事務的間違いのトリックで、束の間、表記上は水域だけど実際は陸地であるような場所だった。その瑕疵は僕たちでない人にすぐに発見されて正されてしまうだろう。たぶん現実的な人に。現実を見よ。ここで僕が見つけたと思った現実は、隣にいるこの女の人は少し嫌なことがあったのかもしれない、その若い女は自分がちやほやされるための話がしたい、ということだ。彼女の曖昧な身体的なメッセージを多義的な的な意味で勘違いしていたかもしれない。しかしそのときは、それが明るいようなものとして僕には見えていた。彼女の表面の若さと僕の暗さとの対比が、その明るさを際立たせていたのかもしれない。僕がそのとき居た場所、公用地ではなく私有地という意味での、つまり、いま彼女と共有している公用地に囲まれて影響受けている僕の私有地、その場所は僕にとっては暗かった。そこは1人でいたなら孤独と感じなかった場所だけれど、2人で何もしゃべらないと「ひどく孤独」であるような場所。1人での孤独より2人での孤独のほうが孤独、というのは知ってる人は知ってる。その「知っている人は知っている孤独」よりさらに「ひどく孤独」という感じの場所。だけど3人ではそんなに孤独ではない場所。また、普段人見知りで無口な僕は、そのような僕をまだ知らない彼女にそのような僕を最初だけは知らないでいてもらうためにも、彼女に話しかけて少し話をするべきだった。最初が肝心。それに、彼女は僕の好みの顔をしていた。ひどく。僕は1人の男として1癖も2癖も3癖もある男になりたいと日々願っていた。僕だけの顔。僕は話しかけていた。僕は安全なルーズリーフですよ。君の親、友達にも、誰にも見つけられない安全な白い紙。彼女はあまり上手とは言えない可愛いふうのイラストをルーズリーフに描いた。その近くに僕は彼女が描いたのものよりは下手なイラストを描いた。「上手ですね」と言うために。彼女の心は僕を見ていなかったけれども、僕の声を聞いて、彼女は柔らかな雰囲気だった。言語的には特に大した事は話してなかった。非言語的には何かがとてもうまくいってる途中であるような感じがした。急速にブクブクふくらんだものが僕の頭の閉鎖的な会館で閉鎖的な記者に対して会見した。

(あの、こんにちは。あなたたちと話すときのように、相手が自分と似ていたら、自分自身と会話してるみたいになるのだと思う。僕たちがどんな人かと言えば、自分のことがそんなに好きじゃない人間だと思う。僕たちはそれに共感する。そんなとき僕たちは計算過程は無茶苦茶なのに答えだけは正しいような「ここにある好きだという気持ち」のことまでも、自分のことが嫌いなために、それを嫌いになる。ひねくれ者だ。何かを好きになっている自分が嫌い。恥ずかしいだけなのかもしれない。もちろん、そういう感情は時と場合によって変化する。自分のことを決めつけてしまうことには用心しなければならない。何かを好きな「時と場合」があり、同じ何かを嫌いな「時と場合」もある。つまり僕が言いたいことは、あらゆる時と場合という、ありえない時と場合を考えたとき、一般的な場合、僕たちは自分のことがどちらかと言えば嫌い、ということなんだと思う。だけど一般的が完全になくなってしまった場合、つまり「時と場合」というものを一切考えない場合、恥ずかしさを忘れたようなとき、そんな場合があったとしたら、僕たちは「ここにある気持ち好きだという気持ち」のことが大好きだと認めるかもしれない。いま僕はそれを認める。僕はいま一般的な意味ではなくて、あなたたちとは違う。わかる? あなたたちはもう帰ってくれ。会見終了。さあ、帰った帰った。あ、君は帰らなくていい。帰らないで。あの、君は、時と場合と金星人を考えない場所に行きたいですか? 例えばの話し、時と場合を考えないために自分たちの世界を壊したら、金星人のことなんか忘れて、バラバラになった世界の破片を集める作業を開始しましょう。壊れた破片を使って別々の世界だった世界を1つの世界に作り変える。そこが新しい住処で、常識的には壊す時にも作るときにも、一緒に身体を使うしかなくなる。僕は常識的に明らかな前提を認めることになってしまった。その事実認めるか認めないか。そこを跳躍するのが普通だと認めない、という、その自分と議論を始める際の点検を認めるか認めないか。もうどうでもよい。良いけれど最終的には、例えばの話し、食い違ってたらよくないね。食い違ってたら罰ゲームとして、注目されながら2人では食べにくい1つのモスバーガーを向かい合って2人で一緒に食べて「食い違い」を消していく両側から欠けていく三日月ような気持ちにしていかなければならないし、前提としてのお茶という名のコーヒーを飲み干した後に砂糖を再発見しながら同時に2人が共有している世界も再発見していかなければならない。言語的にも非言語的にも議論されている身体的事実に、恋は病気的推移法則を適用していき、気持ちの譲渡等、最終的に結論を導く。正直言うと、この糖質化していく過程が「常識的だ」と書いた手紙を運ぶために詭弁的高速道路を使うような僕がいます)

彼女は僕に興味持ち始めたようだった。彼女は自分の心の手鏡から目を離したから。彼女の心がやっと外に向いた。僕は笑っていた。僕は自分の太陽を直接見るのではなく、たぶん彼女の太陽を見るのでもなく、濃い緑色の葉っぱとなったルーズリーフが生い茂る森の木漏れ日の揺れ動きかたに同調して微笑んでいた。森の中の空気が澄んだ暖かさ。僕は2つの太陽が2人の1つの太陽だと思っていた。2つの太陽が重なったような錯覚。運命的な時間帯。太陽が太陽を隠す月食。どちらの太陽が月の役割を果たしているのだろう? いま彼女は、未来から見て今という過去を値踏みするかのように、僕の表面を確認していた。僕はそれを意識した。僕の眼は眩しくて1つの太陽もちゃんと直視できない。僕は自分自身では見たくないような笑みを表出させたかもしれない。僕は彼女の花壇に踏み込んだような態度、言動になっていたかもしれない。曇ってきたようだった。僕は直視できるようになった。彼女の顔は、いつもの自分の夢で長い時間遊んだ後みたいになって、暇そうになっていた。彼女は下を向いて自分の指をいじりったり服を触ってみたりタイミングを計りだした。1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数1つ2つ3つ無数、僕たちは、リズム感が悪いドラマーとしての彼女が僕を拒絶する非言語的動作のちぐはぐなリズムを共有しながら、そっけない会話と沈黙で暇をつぶし、僕たちがソロ活動するスペースが広がるタイミングを待ち、女性に拒絶された僕、はっきりと告白したわけではないのにはっきりフラれたように思っていた僕は、誰でもいいから僕の生活環の中で偶然すれ違っていく「すごく可愛く且つすごく綺麗な女性」に振られるためだけに次々と声をかけて、何故か暗くなるまでバナナ持っていた僕は、バナナの叩き売りを開始、いやむしろ、星空の下の無数の美女たちにはフィリピン産のバナナを次々と無料で配布して、その場で食べてもらいたいと、お月様に願っていた。

文学極道

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