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作品 - 20130301_227_6737p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


【coreless。】

  にねこ

骨のない魚が窓の外を歩いている
靴がないと 振り返った
(がんじがらめの嘘が
ぺらり浮かんで消える)
この世で一番大きなワニが
捕食するその顎で 噛み砕くその前に
一息つかせておくれよと
飲み込むと喉が灼けるようで
目を白黒させた
胃を守るために美味しくいただくはずだった
フュメ・ド・ポワソン
には地獄が渦を巻いているそうで
震えて濁らせた
スープの澱がやがて
眼球の新鮮さを失うようで
わたくしは?

骨がないからどんな風にでも
折り曲げられる と言ったのは
だれか高名な生物学者だったか
「ガクジュツテキには
とブリーフをずりあげながら語る
(摩擦ではげた頭が赤い)
「ヒセキツイドウブツです
「ヒジョウにコウドな
「キワメてマレな
早すぎた熱放出を終えて
急速に冷めていく高名なアレなキトウが
咳払いする
「さしずめキミは
「ゼンドウドウブツです
「ウゴメクようでしたので
「もしかすると
「カンケイセイブツかもしれない
「千匹
「キミのセキニンだ
ティッシュに丸め込まれた
論議の終焉
意味のなかった祈祷と
添加される責任のアスパルテームの神殿が
飲み込めない
「しばらくチリョウのために
「ペニスのソウニュウをつづけます
「ケイカをみるため
「ツウインしなさい
それはどこか遠くの国の風習ですか
高名な生物学者は
高名なお医者様でもあったので
ごっこ遊びにぬかりはなかった
丁寧に小骨一本も残さぬように
指をならせば
丁寧にみつ折にされた
骨のない魚の密猟が
ウミウシのアメフラシ儀式を形作る
しってたかい
貝殻を体内にかついで
あのぬめぬめとした
さびしいイキモノは生きているんだぜ
「それはチガイます
「そもそもギョルイではありません
生臭いミルクが急速に乾燥して
塩分とミネラルとショ糖が
原始のスープキューブに
固められたトマトソース
ワニの背のゴツゴツしたウロコが
削っていくチーズの
こんがりと焼かれてしまうその前に
雨を降らせてこの火照りを冷まさなければ

魚は靴をはかない
まして長靴は はかない
水の中で無意味な靴は再生し
L・フェニルアラニン
のような強い甘味が
喉を灼くから
とてもとても薄い貝殻で
守らなきゃいけないものがある
貞節というのは時代錯誤なのか
骨のないわたくしが
いがらっぽく呼吸するので
誤解だらけの靴紐が結べない から
再生しワニに食べられるまで
気泡をぷくぷくと口のふちに
しろい粘膜上皮がふるると鳴いた
(あ
昇天
致しました)
大気圏の層の奥ひだから見下ろしたのだ
たっぷりのチーズをかけて
こんがり焼かれたラザニアの
帰れない山脈が背骨だというのならば
やはりわたくしは
骨のない魚に違いないと
ロッキーの拳骨がしたたかに
(がんじがらめの嘘が
陰毛と一緒に
喉に絡まる)

海洋生物が
進化と淘汰の
淫乱な交わりで
その欠陥が
補完されてさらにケッカンが
形成される
流動する
まるで性器みたいな
ゼンドウするインビなセイブツが
骨がないから何も言えない
わたくしを
めぬぬと陵辱していく
ワニの大きな顎が噛み砕く前に
たとえばそれが
薄汚れた落書きだらけの
駅のトイレの神殿に
いかにも恭しく供えられている
芯なしのペーパーのように
簡単に剥がされていく
オルガスムでも
水にながせよと
ばくんと
蓋を閉じた

文学極道

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