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作品 - 20130214_563_6697p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


スキーリゾート

  山人

遠方に見えるピステには
うごめく虫たちのように
人がはらはらと落ちながら滑走している


三月の風は
少しやわらかく吹いていた
午後の日差しが雪の粒に反射して
雪だるまは静かに寝そべっている

熟れた生活を楽しみ
もいだ果実を切り分けて
人は人として休日を貪り食う

轟音と共に天然林をすり抜けていくクワット
眺めるとそこに
やはりたくさんの人々が
スロープの中で
どこかに落ちていくように
滑走している



昼を過ぎたレストラン
肉の臭いをスキーウェアーの下に隠した客は
しきりに携帯を弄り、器官の機嫌を伺う
体液は人に棲み付き、何かに促されるよう形を変える
嬌声と笑顔で日中を演じ、ゆるやかに夜にむけて溶解してゆく

ひなびた目尻には、柔らかい陽光が差込み
うつむきかけた女を横に侍らせている
薄い斑点状のそばかすを具えた美しい女
綴じられた口元は何かを発するのだろうか
美しい女は尽きてしまったような男の傍に居る

なにひとつ解けないもの
それが私であり、いつまでも紐は解けない
結び目をしょったまま
私はひたすら猿人となって新雪を蹴散らし
年齢不詳を演じる



広大なリゾートエリア
多くの尾根を持つ小山脈を連ねる連絡リフト
踏み均された数々のコース
リフトの定期的な信号音と
決まった台詞を吐き続ける係員

丸い峰からどんよりと歩いていくニホンカモシカ
多くの人々がまるで何かを見るように指差していた

文学極道

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