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作品 - 20121121_681_6486p

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不在の梯子

  中田満帆


 不在の梯子を揺さぶりつづける
 永く
 ただながく 
 うえにはだれもいないのに 
 だれもいないからこそ
 おくびようとさみしさを
 佇んでゆさぶるのだ

 呼ぶもののないところ
 ふり返るひとのいないとき
 恥ずかしい身のうちを青い天板に語る
 知つていることも持つているものもなく
 午后のなかでひとりのみの悪態をつくだけ
 死んでいつたやつらへ
 遠ざかつていつたひとたちへ
 ただ毒を吐く

 もうぼくが愛するのは止まつているものだけだ
 朽ちかけの家並みに草むらの遊技場
 忘れられたままのいつぴきに悲しいまでの一台
 それらを打ち毀しながら愛し
 よりよい位置を探すのだ
 さわがしく気のふれた連中を遠ざけて

 しかしきようの夕ぐれどき
 ぼくはとうとう梯子を引き倒した
 草むらに葬つて花を散らしてやれば
 どこからかざまあみろと声がする
 そこでかぎりない悪態も疲れはてて
 椅子もない室のなかぼくはひとり眠つていた


    それでも明日になれば梯子はふたたび青い天板へかかつてあるだろうか

文学極道

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