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作品 - 20121016_030_6416p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


孤立故の快感

  岸かの子

あの時は雑踏だった
絶えず人の口汚い噂話しと
揉め事の繰り返しとが絶え間なく日が
テレビジョン画面から流れる都会の
交差点の様に
唯一の処女性を保つ精神には
赤いベールの幕がそれらを遮断する為に
自らを覆い匿う
孤立した木の葉を手に取れば
風の匂いが鼻腔へと突き刺さる
自然の香りは都会の雑踏から逃しつつ
時が来れば また現へと誘う
溢れ出る言葉と遊べば思考の渦へ巻き込まれ
人間である事さえも淘汰され
気泡へと変化する
これも生きてきた証ならば
いずれ死んでゆくこの身体さえ
歓喜の産声を誇りに思うだろう
間違いを決して行わなかった亡き母の亡霊の様に
現と未来を交互に生きてゆく
赤いベールを被った私は
交差点の真ん中で立ちすくむのか

文学極道

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