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作品 - 20120601_088_6126p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


こんなん出ましたけど。

  田中宏輔



!!!!!!!!!!!!! マッチ棒
/ですか?
きみのおできと、ぼくのおできを交換しよう。
ブツブツ交換しよう。
空を見上げれば、空がある。
そら、そうやわ。
きみを見つめればブツブツがある。
きみ、ブツブツやわ。
王は死んだ魚のように美しい。
死んだ魚は王のように美しい。
蝶が蜘蛛を捕らえる。
蜘蛛が蝶に捕らえられる。
知性とは、天の邪鬼である。
同じものを違うものとして見、
違うものを同じものとして見るのだから。
七月の手のひらのなかで
みるみるうちに、蚯蚓がやせてゆく。
あれって、ノブユキじゃない?
ぼくが似ていると判断した以上、
それは本物はノブユキである。
奇跡は起こらない。
あれって、ノブユキじゃないの?
たとえ、ぼくが出会ったノブユキが、
正真正銘、本物のノブユキでも
ぼくが似ていると判断した以上、
それは本物のノブユキではない。
あれって、ゼッタイ、ノブユキだよ。
奇跡はかならず起こる。
神さまに著作権はない。
タダ働きなのだ。
神さまにしか著作権はない。
ザクザク、お金が入ってくるのだ。
日記帳を開いて
きょうの神さまに点数をつけてあげる。
神さまもまた、日記帳を開いて
ぼくに点数をつけてくれる。
むかし、むかし、あるところに
スーパー・ガッチリ体型(通称SG系)の
おじいさんとおじいさんが
仲良くいっしょに暮らしておりました。
ある日、ひとりのおじいさんが、
火にくべるためのおじいさんたちを狩りに山に行き
もうひとりのおじいさんが、
たくさんの汚れたおじいさんたちを洗濯するために川に行きました。
山に入った方のおじいさんは、
山のなかで迷っていたおじいさんたちの指をポキポキと折り曲げ
おじいさんたちの枯れ木のような手足を、つぎつぎと鉈で叩き切り
縄でひとつにくくって、背中に背負って家に帰りました。
川では、もうひとりのおじいさんが
命乞いをしてひざまずくおじいさんたちを、つぎつぎと岩に叩きつけて
血まみれになったおじいさんたちの顔を、
さらにざらざらの岩肌にこすりつけては
破けた皮膚のあいだに鋼鉄製の鉤爪をひっかけて
ベリベリと生皮をひん剥いていきました。
そのうち、川の上流から
ぶくぶくに太ったひとりのおじいさんが
どんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
すると、もうひとりのおじいさんは
その太ったおじいさんを水から引き上げ、
自分たちの家に連れて帰りました。
そして、先に家に帰っていた、
山に行っていた方のおじいさんとふたりで
重い重い大きな斧を振り上げ
川から引き上げたぶくぶくに太ったおじいさんの頭上目がけて
思いっ切り、振り下ろしました。
すると、そのぶくぶくに太ったおじいさんは、
畳のような大きさのまな板の上で、まっぷたつになりました。
何かは、考えるためにある。
何かがあるために、考える。
パルメニデスの「思惟(しい)することは存在することと同じだ。」という言葉について
この言葉があらわす真の意味を考えないこと。
笑いたければ、笑えよ。
自分で笑え。
笑えるときに、笑えよ。
自分を笑え。
天国は激しく求め合う。
天国は激しく求め合う。
燃える義足!
ニセの足。
気が歩く。
違う。
木が歩く、と書いて、木歩という名前の俳人がいた。
富田木歩という名前の俳人だ。
足が悪かったらしい。
たしか、木でできた義足を使っていたと思うんだけど
前にも、「話の途中で、タバコがなくなった。」という詩のなかに書いたんだけど
むかし付き合ってたエイジくんの顔に似た顔の俳人だ。
関東大震災のときに、焼け死んだそうだ。
いったんは、友達に助けられたそうなんだけど
その友だちに背負われて助けられたそうなんだけど
あとで、その友だちとはぐれて、焼け死んだという。
燃える義足!
ニセの足。
奇跡は起こらない。
奇跡はかならず起こる。
ガラガラ、ガッシャン、ガシャン、ズスン、ピィー。
雷が鳴った。
こんなん出ましたけど。
!!!!!!!!!!!!! マッチ棒
/ですか?
蝶が蜘蛛を捕らえる。
蜘蛛が蝶に捕らえられる。
王は死んだ魚のように美しい。
死んだ魚は王のように美しい。
ぼくが雷に親近感を持っているのは
かつて、ぼくが雷であったことの名残であろうか?
鬱病のハーモニー。
きみの名前で考える。
言葉が、わたくしを要約する。
なにを省いて、なにを残すのか。
言葉が、わたくしを約分する。
なにをなにで割るのか。
魔術師、手術中。
魔術師、手術中。
呪文のように繰り返す。
呪文のように繰り返す。
あるいは、ただの早口言葉のように。
繰り返されるから呪文になるのだ。
おはようございます。
こんにちは。
お疲れさまでした。
お先に失礼します。
さようなら。
ただいま。
おやすみ。
天国は激しく求め合う。
天国は激しく求め合う。
七月の手のひらのなかで
みるみるうちに、蚯蚓がやせてゆく。
もう、かんべんしてください。
こまるわ、わたし。
ブヒッ。
間違うことが、わたしの仕事。
棒も歩けば犬にあたる?
裏切ることが、わたしの仕事。
一歩の道も、千里からー。
くるくるくるぅ、くるくるくるぅ。
トラは、くるくるとまわるとバターになったけど
ぼくは、くるくるまわったら、なにになるんだろう?
魔術師、手術中。
魔術師、手術中。
こんな、バカみたいな詩を書いていると
むしょうに、フランシス・ジャムの詩が読みたくなる。
人間らしい気持ちを取り戻したくなるのだろうか。
「わたしは驢馬が好きだ……」を読む。
可愛い少女(をとめ)よ、云つておくれ
わたしは今 泣いてゐるのか 笑つてゐるのか?
堀口大學の訳はいい。
ぼくは、女でもあって、少女(をとめ)でもある。
ぼくにも、ジャムのこころが泣いているのが見える。
そうして、ぼくも、ジャムになって、泣くのだ。
ジャムになって、泣いているのだ。
笑いたければ、笑えよ。
でも、自分で笑え。
笑えるときに、笑えよ。
でも、自分を笑え。
しっぺ返しは、かならず来る。
おもしろいほど、来る。

文学極道

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