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作品 - 20120531_057_6124p

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燃える島

  山人


夜の海をゆらゆらと私は舟を漕いでいた
天球の羊水のような空間
おだやかな潮の香りがおびただしい生を封じ込めている
櫂の力をゆるめると島が見える
オレンジ色の光りを放ち、島がゆらめいている
火の粉がときおり闇にのびあがり
島は豊かに光っていた
波打ち際の静かな海岸
かぞえきれない蟹が砂地を徘徊している
いつのまにか蟹の上を私は歩き、運ばれるように島に入っていく
島は皆、若い人で溢れていた
椰子で組まれたやぐらの上で幾人かが叫んでいる
天空には星がまたたき、静かに光っていた
透明な瞳と透き通った頭蓋があり、脳が燃え出している
焼け焦げて死んでしまった人もいた
私は椰子に身を隠しながら近寄った
やぐらの人がしたためた唄が、島を包んでいる
一心不乱にそれを聞く人の脳が燃える
電球のように燃えあがる脳がやぐらを取り囲んでいる
やぐらの人が手をさしだし、光りを持つ人々を次々に引き上げる
やぐらに上がれなかった人は次々と黒く焼け、
焦げた脳がぶすりぶすりと黒煙を吐き出し、静かに死んでいった
地には億千の蟹の群落がうごめきだし
焼け焦げた人を海に押しやった
舟の綱をほどき、海岸の蟹の絨毯をあとにした
島はやがてめらめらと燃え出し、島全体が赤く浮きあがった

文学極道

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