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作品 - 20120227_667_5897p

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あしあと

  山人


とめどなく
とめどなく
降り続くあてどない白い冬
皮膚は体に張り付いて 血管は黒くちぢこまる
色あいや めまぐるしく動き回る生命の欠片もなく
いまはただ
うつむいた雪が
降り積もってゆく

脊髄が 錆びついてくるのを感じる
骨が膠着し 何も言わなくなると
ますます冬は
冷たくよそよそしくなる
寒さが喉で固まり
発する声をも強張らせてしまう

     *

重く夜は垂れ下がっていた。
男はまた、穿孔虫をつまみながら自らの年輪を愛撫している。
止む無く 青刈りされた言葉を発し続ける。
生あたたかい薄い刃が 水のように私に入り込む。

ぶるぶると心血は吹き上がり、激しくののしりあう。新月は欲情し、因縁を噴火させ、活動してしまったのだ。ボコリボコリと私と彼の口から生まれる血生臭い赤子は古い家の隅々にみるみる堆積され、目を剥き、口にはやじを蓄え、裂けるような泣き声を残して、直ぐさまぐったりと死亡する。それらの死骸は怪しく光ったかと思うと下面に吸い込まれていった。
煮えた脳液は冷めることがなく、怒りと狂気は果てしなく製造されてゆく。彼は生き物ではないのではないか、そう思った時、私の頭の中のピンが外されたかのような感覚に陥った。  

ぼうっとした まだ朝になりきれない三時。
渦巻いて悶々とした吐き気と、乾いた怪しい鼓動が深夜を越え、重い元旦を迎えていた。
血流もまだ馴染んでいない、とらえどころのない空間。胃腑から浮き出てくる悪寒を感じながら闇に嗤う。
凍った月の夜を歩く。
沈黙が重力に沈み まだ夥しい夜が陳列されている。
 轟音を蹴散らしながら通り過ぎる除雪車はたくましい。雪を征服し、翻弄している。その傍若無人な力が朝になりきれない夜の闇を打ち砕いている。鉄の意思が雪と組み合っている。運転台には黒く塗りつぶされた顔を持つオペレーターが乗車している。

     *
吐く息は、白い
纏わりつく、影、と濡れた光 
まぶた、の向こうにある、温かい骨
数えるほどの外灯、の白い道路に 
足跡はまだ無い

文学極道

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