日は明るくとも
空は寒い
住宅がならぶ静かな町の
箱の一つ一つに人はひそみ
日溜りの猫の視線にねぶられ
沈丁花の香が生垣をめぐってくる道は
おとなしかった少女のころ
かよったような
二月
いきさつに追われ
あなたはあなたを少々失って
風邪薬に似た
微量の不幸を味わっている
吸殻やほこり玉
舗道に落ちているのは
きたないものばかりだから
有刺線にからむピンクのリボンを
救いあげようとして
手指がない
メタセコイアの梢のあたり
銀ねずのだんだら雲に
あなたの瞳は嵌めこまれ
見つめているのは
公園の広場を横切っていくあなたの背中
唇をなくしたので
鼻唄にしますか?
鼻をなくしたので
そら唄にしますか?
聴いているのははるかな高みの雲の耳
いましがた
あなたは歯医者の角を曲がっていった
最後に残された片方の足の
スニーカーの靴裏が消えない
つづら模様と白い砂つぶが
からの心に
克明すぎて消えない
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作品 - 20120124_006_5824p
- [優] あなたが散歩する - 鈴屋 (2012-01)
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鈴屋