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作品 - 20111229_716_5784p

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影を貪る

  山人

澱んだまなこが粘りつく液体となってずるずると年月を舐め回している。あふあふと飯をさらい込み、げてものを隅から隅まで食いつくし、寄生昆虫のように板にへばりついている。自己憐憫の色艶がどす黒く光り、ねばい体液をブロック塀に擦りつけている。年月の階段を下ると闇夜が底に広がり得体の知れない腐臭がしている。その臭い水面に黒光る体壁を沈ませ、とどまることのない念仏を唱え始めるのだ。腐臭のする泡ぶくをひとつひとつを嘲笑いながらぶすりぶすりと割っていく。中からは断末摩の悪臭が湧き出て、それを手に取り嗚咽を漏らしながら打ち震えている。体壁は徐々に裏返りそこから無数の菌糸が這い回り、あたりは壮観な胞子が舞う。ぼこっぼこっと菌糸はキノコを立ち上げ、体壁の向こう側・内側・脇、あらゆる壁面からずらずらと粘質のキノコを発生させていく。やがてそのキノコを食い、朽ち果てるまで念仏は果てしなく続いていくのだ。血の重力にもたれるように、ただ引力にしたがって落ちてゆく、臭い血液だけが再び発酵しだす。

文学極道

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