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作品 - 20111022_012_5635p

  • [優]  (無題) - debaser  (2011-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


(無題)

  debaser



1. BIG CITY I WILL COME

この文字を見たとたんにわたしは死んでしまいそうだった。でも首んとこにパイナップルを丸ごと突っ込めるくらいの穴が開いている。身をのりだして中をのぞき込むと道の真ん中に止められたトラックの荷台に砂糖大根の畑が広がっている。とてもかわいらしい丸刈り頭がほかの頭よりもずいぶんと突出している。もう仕事なんかなにもなかったけどビジネス・スーツに着替えてわたしは立ち去ることにした。3年後、同じ大きさのくだものがまちのあちこちにならべられてわたしは遠くのほうからそれを眺めていた。24時間後、だれかがわたしをはこびはじめた。ときどきからだをゆらしてわたしを起こそうとする。わたしはふだんとおなじかっこうでよこになった。こんな場所で夜のとばりのなかからでてくる象なんて見たくなかった。とっしんする。わたしは象のせなかにのってとっしんする。ほんとうだ。やることなんてひとつたりとも残ってやしない。


2.(deleted) and if you kill me

そこに集まってみると全員有無も言わせない調子で死んでいた。どうせありえないことをぼくはいくつも考え今まさに磐石の戦いが始まろうとしている戦場に辿りついてしまったのだと自分に言い聞かせる。手遅れと手紙に書いた知り合いはある日を境に口をきかなくなり独学で手話を覚えた。ぼくはそれをなにかしらの手がかりにすべきかどうかを悩みもしも容赦無用に全員をやっつけていいのなら早くとも明日この家を発っても損はないと思った。そばではカンガルーの親子が自由自在に飛び跳ねポケットからは多くの日記帳がぼたぼたと地面に落ちた。その中の一冊を手に取り最初の日付から読み始めた。数日前の日記に書かれたカンガルーが遠いアフリカのジャングルの奥地で原住民に首をへし折られる出来事はそれが残酷な結末を迎える前に誰にもこの日記を読まれまいとする強い決意がくじけそうになる補足がその数ページ先に記されていた。たとえば相手とのあいだにあらかじめ決められた約束事などなくともその様子はいつも無条件で成立するのはわかりきっているしその逆についてはどこか別の土地で証明されるべきだと思うようになったのはここ数日の変化といっていい。とはいえそれを特殊な儀式と呼ぶべきかどうかについてはいまだ不明瞭なのだがそうすることに差し障りなどあってたまるものか!


3. (deleted) and if you kill me

デパートの三階にマンションがあったので猫田は恋人と結婚した。ただし結婚にはいくつかの条件があった。今思うとそれ自体が肉感的と言えなくもなかった。正午を過ぎると香水がばかみたいに売れ始めた。近くの化粧品店でなけなしの月の小遣いを使い果たすなんてことはない、というのも適度にまっとうな理由なら事前に用意していたのだ。運悪くエレベーターが上昇する時に限って電車の走力は計測不能となった。わたしは長いあいだひとりで暮らしていたと猫田が言うので、胃袋の中で女の香水が放蕩した。「下の階はここより随分と暑いわよ。」「はア」などとカウンターに置かれた上品な肘が正面を向いて、指紋のない五千円札がちらほら散らばっている。首の骨が飛び出した。猫田は自分の膝を軽く叩き始ると、そこはもっと柔らかい気がするのよと言った。売上高についての歌。街の電飾が猫田を睨みながら、エレベーターのウィンドウが裸体の猫田にお仕置きを始めた。猫田は海に逃げるまでもなく、砂浜に打ち上げられた。結婚式に遅れるのはいけない。ナコードはひくひくと笑い、無言電話に応答する。「上には、」「上には、」やがて猫田の身体は前後に揺らされ、使い古しの絨毯の上に倒れた。誰かが助けにくるまでの間に、沈んでしまう危険だってあるのだ。


4. LIQUID CAPITAL

牛島君からの電話はおよそ3分で切れた。ぼくの大好きなアウフヘーベン伯父さんの話にはたどりつかなかったけど手のないオバケが伯父さんに別の名前をつけようとした。だけど何回やってもこの街でいちばん立派な病院で靴を脱いだ重病患者の名前にそっくりになってしまうのでオバケは舌をぺろっと出していなくなった。それとは関係なくそこの病院の先生たちは病気的な診断を日夜繰り返した。あまりにも投げやりなのでは!とぼくたちが声を揃えると、ああやっぱりですかと皮肉を含ませた口調で先生たちは言い放った。しかたなく受け付けで事を済ませ外に出ると女が気の毒な格好で土管につながれ辺りを睨んでいた。女はなぜこんなおかしなものにつながれてしまったのだろうかと考え今は電話越しの誰かに声をいちだんひそめて打ち明け話をするようなありふれた状況ではないしぼくらにはなんの緊迫感もないことにやっと気付いた。いっぽうで女は土管を引き摺って歩きひとたび歩き疲れると土管のなかで寝転がりながら口からでまかせをならべどれでもひとつお好きなのをどうぞと色気たっぷりに誘うとそれが土管の半径に到達するころあいをみはからって女はぴょんと跳ねた。半歩先に足のないオバケが恨めしそうに手を上下にふってあたかも宙に浮かんでいる様子があまりにも綺麗だという噂を聞いて駆けつけた子どもたちが土管の中で寝転がる女を見つけそれが何の部品であるかを問われる前に女に向かって部品を投げつけた。土管の中をどこまでも転がる部品はすべてが破裂するような音を立て、どれもこれも聞くに堪えないとはまさにこのことだよと言いながら子どもたちはいっせいにいなくなった。土管の中で転がる部品を手にとった女はそれを体のいたるところにはめ込みぼくは土管につながれた女の監視を依頼されているわけではなかったけどそういえば牛島君に何かを頼まれたような気がして不安になった。なにかそれは過去の不安とは比較にならないような不安だったのでもしかしてぼくは部品の誤作動が原因で死んでしまうかもしれないと思うと女はそれを察知したのか膝を折って土管を置いて前進した。洋服にこびりついたものがもうすぐ零度以下に冷やされてしまうのよと女は去り際に言ったような気がしてぼくは何もかもが狐によって騙されていることに気付いた



5. Who's FUCK

hmm
hmm
hmm

これは二匹の象が麒麟を追いかけている
これは二匹の象が麒麟を追いかけている

文学極道

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