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作品 - 20111001_432_5579p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


聖なる館。─A Porno Theater Frequented At Midnight By The Drag Queen

  田中宏輔



自分について多くを語ることは、自分を隠す一つの手段でもありうる。
     (ニーチェ『善悪の彼岸』竹山道雄訳)

人は、気のきいたことをいおうとすると、なんとなく、うそをつくことがあるのです。
     (サン=テグジュペリ『星の王子さま』内藤 濯訳)

けれども、この物語は、真実でなくなったら、私にとって何になろう?
     (A・ジイド『背徳者』淀野隆三訳)

真実を告げる
     (コクトー『赤い包み』堀口大學訳)

それは価値ある行為となろう
     (ソロモン・ヴォルコフ編『ショスタコーヴィチの証言』水野忠夫訳)

諸君はいったい、いかなるたわむれごとを見、いかなる愛欲の悶えを見ることだろう!
     (ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳)


   *


愛っていろんな形があるものよ
     (R・フラエルマン『初恋の物語』内田莉莎子訳)

顔に化粧をする
     (ギー・シャルル・クロス『五月の夕べ』堀口大學訳)

女に化ける
     (コクトー『塑像に落書する危険』堀口大學訳)

美しく見せて
     (ヴェルレーヌ『それは夏の明るい……』堀口大學訳)

男と寝る
     (レビ記二〇・一三)

心の欲情にかられ
     (ローマ人への手紙一・二四)

禁断の木の実
     (フィリーダボ・シソコ『無の月』登坂雅志訳)

を味ふ
     (アルベール・サマン『われ夢む…』堀口大學訳)

<わたし>
     (ホルヘ・ルイス・ボルヘス『恵みのうた』田村さと子訳)

官能をそそる愛撫に
     (アブドゥライエ・ママニ『文明』登坂雅志訳)

くるう時
     (バイロン『想いおこさすな』阿部知二訳)

分別を失ったときしか幸福になれない
     (ゲーテ『若きウェルテルの悩み』井上正蔵訳)

そういう性質
     (デフォー『ロビンソン・クルーソー』阿部知二訳)

愛に夢中になる、これが僕だ。
     (ヴェルレーヌ『リュシアン・レチノア詩篇5(断章)』堀口大學訳)

私がこの事を楽しみ味つていゐるのを誰れが知り得よう?
     (ホヰットマン『ブルックリン渡船場を過ぎりて』有島武郎訳)


   *


健全な楽しみだって? ばかばかしい!
     (ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳)

だれも自分を欺いてはならない。
     (コリント人への第一の手紙三・一六)

本能はわれわれの案内人だ。
     (ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)

いたわってくれる相手がほしかった。
     (ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳)

ぼくの魂は荒れはてた大きな寺院のようだった。
     (サルバドル・ノボ『ぼくの肉体に預けきった君の肉体の傍で』田村さと子訳)

わかるか?
     (アンドレ・スピール『人間、あまりに人間』堀口大學訳)

そこではすべての薔薇が
     (マリアーノ・ブルール『薔薇への墓碑』田村さと子訳)

愛撫を受けて
     (ムカラ・カディマーンジュジ『大洋』登坂雅志訳)

野生の狂歓をひらめかせて過ぎる
     (バイロン『山の羚羊』阿部知二訳)

嘲りと悪寒の愛
     (デルミラ・アグスティニィ『エロスのロザリオ』田村さと子訳)

その破滅
     (バイロン『M・S・Gに』阿部知二訳)

感覚の世界
     (エリオット『バーント・ノートン・III』鍵谷幸信訳)

ああ、じつに美しい
     (ナボコフ『マドモアゼルO』中西秀男訳)

ふしぎなけしょうは、いく日もいく日もつづきました。
     (サン=テグジュペリ『星の王子さま』内藤 濯訳)

そのとき、自分がすべての女の なかで最もすぐれた者と 想い上がりをおこしました。
     (『バーガヴァダ・プラーナ』服部正明・大地原 豊訳)

あたしのことをお姉さまと呼んでくださるわね?
     (ワイルド『まじめが肝心』西村孝次訳)        


   *


どこか別の世界ね
     (ヴォンダ・N・マッキンタイア『夢の蛇』友枝康子訳)

まったく新しい狂気のような夢の世界
     (ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳)

どう、興味あるでしょう?
     (レーモン・クノー『地下鉄のザジ』生田耕作訳)

あんたもできる? やってごらんよ。
     (ギュンター・グラス『猫と鼠』高本研一訳)

ものごとは慣れてしまうと、ついにはもう、滑稽なことでもなんでもなくなってしまう。
     (ルナール『にんじん』窪田般彌訳)

人間の心というものは、境遇によって、どんなにも変わってゆくものだ。
     (デフォー『ロビンソン・クルーソー』阿部知二訳)

さあ、いっしょに出かけよう、君と僕と
     (エリオット『アルフレッド・プルーフロックの恋歌』上田 保訳)

真昼にも手探りする
     (申命記二八・二九)

その墓穴の暗闇へ
     (ハイネ『不思議にすごい夢を見た』片山敏彦訳)


   *


 小さいのも、大きいのも、肥ったのも、きゃしゃなのも、とてもきれいなのも、 それにあんまり感じのよくないのもいるわ
     (メーテルリンク『青い鳥』鈴木 豊訳)

相よりてくらやみのなかに居りしかば吾が手かすかに人の身にふれつ
     (中野重治『占』)

もう顔も見えるほどになった。
     (デフォー『ロビンソン・クルーソー』阿部知二訳)

彼は笑っている風に見えた。
     (カミュ『異邦人』窪田啓作訳)

ところで ぼくの心臓よ
なんでそんなにときめくか
     (アポリネール『題詞』堀口大學訳)

あわてない、あわてない
     (R・フラエルマン『初恋の物語』内田莉莎子訳)

彼は美男子ではなかった。
     (ギュンター・グラス『猫と鼠』高本研一訳)

彼の輝き、彼の威力のすべての根源は、彼の股間にあったのだ、彼の男根、
     (ジュネ『泥棒日記』朝吹三吉訳)

その道具はたしかにぼくの目から逃れられなかった。
     (ギュンター・グラス『猫と鼠』高本研一訳)

おそるおそる下腹部に手をやって、椅子に深く身を沈めた。
     (エドワード・ブライアント『闇の天使』真野明裕訳)

ひと目惚れというより、ひとさわり惚れだった。
     (ナボコフ『「いつかアレッポで……」』中西秀男訳)

「なにをやってるんです?」
     (ヴォンダ・N・マッキンタイア『夢の蛇』友枝康子訳)

彼にむかって伸ばした手が枯れて、ひっ込めることができなかった。
     (列王紀上一三・四)

──聞こえないのか、おい変態!
     (ルナール『にんじん』窪田般彌訳)

まず、息子にキスをして、彼の耳に二つの言葉をささやく。
     (スティーヴン・キング『霧』矢野浩三郎訳)

お掛けになって
     (レーモン・クノー『地下鉄のザジ』生田耕作訳)

もうすこし、わたしに
     (ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳)

よろこびを
     (シェリー『アドネース』上田和夫訳)

ちやうだい!
     (ポール・フォール『私は〓い花を持つてゐる』堀口大學訳)

「よし、いいぞ」
     (トルストイ『ニキータ物語』田中泰子訳)

「ア、ア、ア、ア、ア、ア、アー」
     (レーモン・クノー『地下鉄のザジ』生田耕作訳)

「こいつはいい!」
     (ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳)

「ああ、行くよ」
     (トルストイ『ニキータ物語』田中泰子訳)

愛撫の手
     (ルミ・ド・グールモン『手』堀口大學訳)

私の手の中に
     (シャルル・ヴァン・レルベルグ『輪踊』堀口大學訳)

出した
     (ボードレール『告白』堀口大學訳)

精液の雨
     (ムカラ・カディマーンジュジ『大地への言葉』登坂雅志訳)

身振りで、彼はもっと欲しいことを示す。
     (レーモン・クノー『地下鉄のザジ』生田耕作訳)

私はよろこんで
     (アンドレ・サルモン『土耳古うた』堀口大學訳)

男の
     (ヴェルレーヌ『この陽気すぎる男に』堀口大學訳)

前に膝まずく
     (アポリネール『色の褪せた夕ぐれの中で……』堀口大學訳)

円周をふくらませ、さらにはその円周を突きやぶって
     (シェリー『詩の擁護』上田和夫訳)

男は
     (フランシス・ジャム『人の云ふことを信じるな』堀口大學訳)

すごいうなりを立てながら
     (ランボー『最高の塔の歌』堀口大学訳)

もう一度いった。
     (デフォー『ロビンソン・クルーソー』阿部知二訳)


   *


「へえ、なんてことはない! こんなもんだとわかっていたら、 もっと早くから覚えるんだった」
     (マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』鈴木幸夫訳)


   *


その口の辺にあざけりの笑い浮かびて
その眼ざしに驕慢の光は照りて、
君が胸、誇りのゆえに昂まれども、
されど、君もまた不幸なり、われとおなじく。
     (ハイネ『君は不幸に生きたまう』片山敏彦訳)

ぼくにはよくわかるのだ、われわれは救われない。
     (ゲーテ『若きウェルテルの悩み』井上正蔵訳)

われら孤独な航海者たち、われら悪魔に魅いられたものたちは、とうに気が狂ってる
     (ナボコフ『ロリータ』大久保康雄訳)

もう正気に返ってはならないのだ
     (ゲーテ『若きウェルテルの悩み』井上正蔵訳)

どうしようもない
     (エーリッヒ=ケストナー『飛ぶ教室』山口四郎訳)

文学極道

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