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作品 - 20110917_836_5544p

  • [優]  (無題) - debaser  (2011-09)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


(無題)

  debaser


その浴槽で母親と父親が半身を交換する夕日のまぶしい午後だった
近所に住む妊婦は世界初の信号無視小説を書いた
ぼくはなんてこともないあだ名でも受け入れるつもりだったし
教室から姿を消したものを追いかけるつもりもなかった
ただ消されたものがやせっぽっちなので
いなくなった二人目が帰ってくるのを待っている


リビングでは母親が体操着の代わりに洗濯するものを探しながら
はだかでふるえる夏は一方的に終わろうとしている
まだはっきりとはしないが父親の会社の秘書の
伝言メモに書かれた魚の三匹と一匹がいずれも行方不明となり
とーりをねり歩く児童はえんうりどるかいを連呼しながら
駅の出口からふくれあがるウィルスのいっしゅるいになった
どちらかというとアーとかウーとかそのような物体に近いと思う
たしかに昨日投函されたあて先のない手紙の中の覚えのない文章は
それが果たしてこれからどうなるかは見当もつかない
ましてやそんなものにもちゃんとした意味があるとは考えなかった
今思えば秘書と母親が同じようなものだったころ
そのころが一番愉快だったなァ
それなのにへんなとこから父親のひとさしゆびが発見され
ひとさしゆびみたいなやつからぼくのおやゆびは作られた


街で一番巨大なマンホールに百人には満たないがたくさんの人が落ちていった
そいつは母親のでべそと一緒に今年の夏こそ海水浴に行きたいと言うので
いろあでやかな水着に着替え
取的が四股を踏む海岸のすみっこでぼくたちはすることもなく日焼けした
近くの国際空港から飛びたった飛行機数機の影が
みんなの街全体を覆い隠し
円塔の傾いた方向にみんなの手をさよならにする
それはさいわい鉄かなにかで出来ていて
コンクリートミキサー車についての同じような解説にもそんなに退屈しなかった
ここから歩いて数分の公民館が蛮族に占領されたというニュースも
今はまだ信じるに値しないかどうかはわからない
なによりも教室からの長い裏道をランドセルの大群がラッパを吹き
小型の核爆弾がやまづみになった空き地はあしたになったら天国になあれ
二人目が帰ってこないと知った舌先が塩ビをまぶされたようにしびれ
でも本当のことはまだ明かされていない


やっぱりでも帰ってこないと思う
寝室の電気が消灯し夢が始まるとぼくの住んでいる街は
すっかりとリノリウムで覆いつくされ猫犬百太郎その他の三千を超えるあるいは
それよりもっとおおくのものものに火がともされ
天皇陛下万歳が土管をはいつくばる非電極界のひとつになられましたので
明後日は体育座りみたいなもんでございます

文学極道

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