東京の雨には
どくぶつがまじっているから
と、母は、
どの窓から、こぼれているのか、ピアノ。いけない、また眠っていた。生け垣に、から咳。蝶を飲みこんだに違いない。信号が変わる。ペダルを踏む、しろいスカートのひるがえり。よぎる。かけ足で、横断歩道を渡れ。雨が来るぞ。奥歯に挟まる触角が、もどかしく、みじかい舌でとれない。あじさいにふかく埋もれる、しろい点を追うと、あたりが、和音につつまれる。のどを摘んで、から咳。横断歩道の白に落ちたのは、間違いなく、羽だ。ひときわ高く、ピアノ。ね、どこから。クラクション。いけない、また眠って。かけ足で、雨だ、どくぶつまじりの雨だ。でこぼこの口蓋に痛いくらいはりつく夏。
そのうちね
仕事もあるから
と、こたえて、帰るつもりはない。
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選出作品
作品 - 20110902_278_5503p
- [優] 休日のすごしかた - 泉ムジ (2011-09)
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休日のすごしかた
泉ムジ