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作品 - 20110801_243_5409p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


LET THERE BE MORE LIGHT。

  田中宏輔



画布(カンヴァス)の中に
(夏目漱石『三四郎』三)

海がある。
(詩篇一〇四・二五)

海辺のきわまで
(エリノア・ファージョン『町かどのジム』ありあまり島、松岡享子訳)

雑草がびっしり生い茂っていた。
(フォークナー『サンクチュアリ』22、加島祥造訳)

亀が
(スタインベック『怒りの葡萄』第六章、大久保康雄訳)

草の中から
(夏目漱石『草枕』十)

音もなく出てきて
(フォークナー『赤い葉』4、滝口直太郎訳)

日向ぼっこをして
(ヘンリー・ミラー『暗い春』春の三日目か四日目、吉田健一訳)

甲羅を干している。
(夏目漱石『野分』三)

日にあたりにでてきたんだ。
(エリノア・ファージョン『町かどのジム』大海ヘビ、松岡享子訳)

そうだろう?
(ロジャー・ゼラズニイ『光の王』1、深町眞理子訳)

いままで気がつかないでいたことだ。
(ヘンリー・ミラー『南回帰線』終楽章、幾野 宏訳)

気持ちいいかい?
(メアリー・モリス『嵐の孤児』斎藤英治訳)

手をのばせば届くところにいる。
(ポオ『モルグ街の殺人』丸谷才一訳)

こつこつ
(トーマス・マン『ブッデンブローク家の人びと』第八部・第二章、望月市恵訳)

階段を登っている妹の足音が聞こえる。
(ポオ『アッシャー家の崩壊』富士川義之訳)

亀が
(スタインベック『怒りの葡萄』第六章、大久保康雄訳)

人間のような顔をして
(コクトー『美女と野獣』釜山 健訳)

ぼくの方を振り返った。
(アドルフォ・ビオイ=カサレス『烏賊はおのれの墨を選ぶ』内田吉彦訳)

つくづくと
(ヘンリー・ミラー『南回帰線』終楽章、幾野 宏訳)

僕を見つめる。
(ガルシン『あかい花』三、神西 清訳、句点加筆)

どう?
(レイモンド・カーヴァー『ナイト・スクール』村上春樹訳)

目がさめていて?
(トーマス・マン『ブッデンブローク家の人びと』第八部・第三章、望月市恵訳)

しっ!
(バルザック『恐怖時代の一挿話』水野 亮訳)

コーヒーが運ばれてきた。
(トーマス・マン『ブッデンブローク家の人びと』第一部・第八章、望月市恵訳)

おいしいトースト toaste を作ってさしあげてよ。
(プルースト『失われた時を求めて』第二篇・花咲く乙女たちのかげに、鈴木道彦訳)

たべる?
(ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る?』38、大久保康雄訳)

彼女は
(J・G・バラード『スクリーン・ゲーム』浅倉久志訳)

ベッドのそばのテーブルの上に置いた。
(シャーウッド・アンダスン『兄弟たち』橋本福夫訳)

ねえ、
(ヘッセ『メルヒェン』アヤメ、高橋健二訳)

また
(ホーフマンスタール『小説と戯曲における性格について』中野孝次訳)

詩を書いてる?
(レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』24、清水俊二訳)

しっ、静かに。
(シェイクスピア『リア王』第一幕・第四場、大山俊一訳)

亀は
(萩原朔太郎『亀』)

そそくさと
(パインソウウェー『夢の河』南田みどり訳)

草の中に入っていった。
(スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』93、柴田元幸訳)

ぼくは泣きだしたいような気持ちになった。
(バーバラ・ワースバ『急いで歩け、ゆっくり走れ』吉野美恵子訳)

ごめんなさい。
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第二幕・第五場、大山敏子訳)

いや、
(カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』5、伊藤典夫訳)

もういい、
(サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』愛らしき口もと目は緑、野崎 孝訳)

しかたがないさ。
(モーパッサン『ピエールとジャン』8、杉 捷夫訳)

だいじょうぶ?
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』第十一場、小田島雄志訳)

いいよ。
(ジョン・ヴァーリイ『さよなら、ロビンソン・クルーソー』浅倉久志訳)

気にすることなんかない。
(ラディゲ『ペリカン家の人々』第十二景、新庄嘉章訳)

いまさらどうにもならないんだから。
(ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳、句点加筆)

それより、
(ポオ『アモンティリャアドの酒樽』田中西二郎訳)

もう何時になるだろう?
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第一場、福田恆存訳)

まもなく雨だろう。
(トマス・ピンチョン『スロー・ラーナー』秘密裡に、志村正雄訳)

そろそろ行くよ。
(レイモンド・カーヴァー『ヴィタミン』村上春樹訳、句点加筆)

いったいどこへ行くの?
(ジェイムズ・エイジー『母の話』斎藤英治訳)

どこへでも行きたいところに。
(ヘッセ『メルヒェン』詩人、高橋健二訳、句点加筆)

どこでも?
(カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』4、伊藤典夫訳)

ああ、そうだよ。
(ラリー・ニーヴン『太陽系辺境空域』小隅 黎訳)

行かないのかい?
(ウィーダ『フランダースの犬』4、村岡花子訳)

バスに乗って。
(ジャン=フィリップ・トゥーサン『浴室』直角三角形の斜辺、野崎 歓訳、句点加筆)

バスに乗って?
(マイ・シェーヴァル、ペール・ヴァールー『笑う警官』6、高見 浩訳)

だって、
(コレット『青い麦』一五、堀口大學訳、読点加筆)

雨が降ったら濡れるだろ。
(夏目漱石『草枕』七)

それに、
(バルザック『谷間のゆり』初恋、菅野昭正訳)

バスでなければ間に合わないんだ。
(オネッティ『ハコボと他者』杉山 晃訳)

わたしの顔にも、それが感じられるわ──
(J・G・バラード『永遠の一日』浅倉久志訳)

顔だって?
(トム・リーミイ『ハリウッドの看板の下で』井辻朱美訳)

ええ。
(マルグリット・デュラス『愛』田中倫郎訳)

そうよ。
(モーリヤック『テレーズ・デスケイルゥ』五、杉 捷夫訳)

それ、聖書の文句かい?
(スタインベック『怒りの葡萄』第二十八章、大久保康雄訳)

さあ、
(コクトー『美女と野獣』釜山 健訳)

どうかしら?
(カポーティ『草の竪琴』1、大澤 薫訳)

わからない。
(シェイクスピア『ヴェニスの商人』第三幕・第二場、大山敏子訳)

そう?
(サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』バナナフィッシュにうってつけの日、野崎 孝訳)

まあいいさ。
(ジュリアス・レスター『すばらしいバスケットボール』第一部・1、石井清子訳)

ぽつぽつ雨が降りはじめた。
(カフカ『観察』騎手の反省のために、本野享一訳)

雨がぽつぽつ降り始めたようだった。
(ナボコフ『賜物』第1章、沼野充義訳)

雨だわ。
(サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』25、野崎 孝訳)

そうとも。
(ロバート・ニュートン・ペック『豚の死なない日』3、金原瑞人訳)

さあ、これをごらん。
(ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』経過報告11・四月二十二日、稲葉明雄訳)

なあに、これ?
(レイモンド・カーヴァー『羽根』村上春樹訳、読点加筆)

ハンカチの切れはし?
(クリスティ『アクロイド殺人事件』8、中村能三訳)

わかるだろ。
(サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』4、野崎 孝訳)

僕が
(コクトー『怖るべき子供たち』二、東郷青児訳)

書いた詩の一節だ。
(ヘンリー・ミラー『暗い春』春の三日目か四日目、吉田健一訳)

それをつまんだ瞬間に、
(フィリップ・K・ディック『ユービック』9、浅倉久志訳)

バス停で、
(マ・フニンプエー『同類多数』南田みどり訳)

バスというバスが
(マ・フニンプエー『同類多数』南田みどり訳)

爆発する。
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』2、浅倉久志訳、句点加筆)

戦争かな?
(ヘッセ『知と愛』第十三章、高橋健二訳)

戦争には、こういうことは、いくらでもあるんだ。
(ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る?』43、大久保康雄訳)

僕はそこに、僕の頭文字をつけてやりたかった。
(ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)

もちろん、
(シェイクスピア『マクベス』第五幕・第九場、福田恆存訳)

ばらばらだ。
(ナディン・ゴーディマ『隠れ家』ヤンソン柳沢由実子訳)

それに
(ドストエフスキイ『白夜』第二夜、小沼文彦訳)

ほら、
(フィリップ・K・ディック『去年を待ちながら』7、寺地五一・高木直二訳)

ぼくの生れは山羊座なんだ。
(サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』バナナフィッシュにうってつけの日、野崎 孝訳)

美しいひびきをもっているだろう?
(カロッサ『美しき惑いの年』われらのプロメートイス、手塚富雄訳)

それに加えて、
(カミュ『異邦人』第一部・四、窪田啓作訳)

パパは
(ナボコフ『ロリータ』第二部・1、大久保康雄訳)

まったく職業というものについたことがなかった。
(ジュリアス・レスター『すばらしいバスケットボール』第一部・1、石井清子訳)

何時間も
(フィリップ・K・ディック『最後から二番目の真実』28、山崎義大訳)

ふわふわ浮いていた。
(エリカ・ジョング『飛ぶのが怖い』5、柳瀬尚紀訳)

これは関係なかったかな?
(ギュンター・グラス『猫と鼠』XI、高本研一訳)

ね、いいと思うかい?
(ナボコフ『ベンドシニスター』7、加藤光也訳)

嘘つき。
(ラディゲ『ペリカン家の人々』第五景、新庄嘉章訳)

でたらめ。
(エリカ・ジョング『飛ぶのが怖い』8、柳瀬尚紀訳)

おい、おい、
(モーパッサン『ピエールとジャン』6、杉 捷夫訳)

ぼくが
(ポオ『不条理の天使』氷川玲二訳)

嘘をいったことがあるかい?
(ハーラン・エリスン『満員御礼』浅倉久志訳)

まるで子供のような口をきくのね。
(コレット『牝猫』工藤庸子訳)

嘘はいけないことだってママに教わらなかったの?
(カポーティ『夜の樹』川本三郎訳)

どうして? いけないか?
(ロバート・A・ハインライン『夏への扉』2、福島正実訳)

駄目よ。
(ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)

だめだめ。
(アリストパネース『女の平和』高津春繁訳)

でも、
(ジェイムズ・エイジー『母の話』斎藤英治訳)

本物の詩ってものは、もっとも嘘だらけのもんだからね。
(シェイクスピア『お気に召すまま』第三幕・第三場、阿部知二訳)

自然界でも芸術でも、一番魅力的なものはすべて人をだますことで成り立っているんだ。
(ナボコフ『賜物』第5章、沼野充義訳)

兄さん?
(夏目漱石『三四郎』十二)

あんまり馬鹿なことは言わないでね。
(オー・ヘンリー『最後の一葉』大津栄一郎訳)

とにかく詩なんてもううんざり。
(サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』テディ、野崎 孝訳)

たくさんよ。
(ドストエフスキイ『白夜』第四夜、小沼文彦訳)

それより
(ヘミングウェイ『フランシス・マコーマーの短い幸福な生涯』大久保康雄訳)

コーヒーのお代りは?
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』1、浅倉久志訳)

コーヒー?
(ロバート・B・パーカー『約束の地』12、菊地 光訳)

いや、いらない。
(カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』5、伊藤典夫訳、句点加筆)

泣いてらっしゃるの?
(マルグリット・デュラス『愛』田中倫郎訳)

ああ、
(ラリイ・ニーヴン『太陽系辺境空域』小隅 黎訳)

そうさ。
(モーパッサン『ピエールとジャン』3、杉 捷夫訳)

そのとおりさ。
(J・G・バラード『たそがれのデルタ』浅倉久志訳)

いいかい、ぼくは忘れないからね。
(ロジャー・ゼラズニイ『燃えつきた橋』第四部、深町眞理子訳)

それは
(カフカ『城』16、原田義人訳)

こんなふうに
(フォークナー『クマツヅラの匂い』3、瀧口直太郎訳)

海辺のうららかな午後だった。
(トム・レオポルド『誰かが歌っている』26、岸本佐知子訳)

乾いた
(ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳)

砂の上を
(ミルハウザー『イン・ザ・ペニー・アーケード』第二部・太陽に抗議する、柴田元幸訳)

はぐれた
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』1、浅倉久志訳)

波が一つ、
(ゴールディング『ピンチャー・マーティン』3、井出弘之訳)

ひと
(ロバート・A・ハインライン『夏への扉』7、福島正実訳)


(ヘッセ『メルヒェン』ファルドゥム、高橋健二訳)

──迷子になったのかい?
(メアリー・モリス『嵐の孤児』斎藤英治訳、罫線加筆)

そうとも、
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第一幕・第五場、大山敏子訳)

そうさ。
(テリー・ビッスン『時間どおりに教会へ』3、中村 融訳)

そいつは
(キャロル『鏡の国のアリス』6、高杉一郎訳)

波だった。
(ピーター・ディッキンンソン『エヴァが目ざめるとき』第二部、唐沢則幸訳)

迷子になった
(フリッツ・ライバー『ビッグ・タイム』12、青木日出夫訳)

さざ波であった。
(泉 鏡花『怨霊借用』三)

誰かが、うっかり置き忘れていったのだ。
(サリンジャー『シーモア─序章─』井上謙治訳)

文学極道

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